1,3-ジクロロプロペン

1,3-ジクロロプロペン：土壌線虫防除剤としての特性とリスク

1,3-ジクロロプロペン(C3H4Cl2)は、シス型とトランス型の2つの異性体を持つ有機塩素化合物です。無色の液体で、クロロホルムに似た甘い臭気を持ち、引火性があります。特に、蒸気と空気の混合気体は爆発性を持つため、取り扱いには細心の注意が必要です。

用途と歴史

1,3-ジクロロプロペンは、主に農業分野で土壌燻蒸剤として利用されてきました。線虫などの土壌害虫の駆除に効果があり、世界的に広く使用されてきました。代表的な製剤としては、シェル社製のD-Dやダウ・ケミカル社製のテロンが知られています。日本では1950年に農薬登録を受け、1984年の1,2-ジブロモエタンの発癌性問題以降、代替剤として需要が拡大しました。1,3-ジクロロプロペンの生産量は、1999年の実績で原体10,998キロリットル、単剤17,734キロリットルに上りました。

危険性と健康への影響

1,3-ジクロロプロペンは、人体に有害な影響を与える可能性があります。蒸気を吸入すると、咳、喉の痛み、頭痛、嗜眠などの症状が現れる可能性があります。また、経口摂取した場合には、下痢、嗜眠、頭痛、吐き気などの症状を引き起こす可能性があります。蒸気は空気より重いため、漏洩した場合には地表を這うように拡散し、離れた場所でも引火の危険性があります。

環境への影響と規制

1,3-ジクロロプロペンは、環境中にも残留し、水質汚濁の原因となる可能性があります。そのため、水質汚濁防止法では排水基準が20μg/l、環境基本法および水道法では水質基準が2μg/lと定められています。毒劇法による毒物・劇物の指定を受けていませんが、その毒性と環境への影響から、適切な取り扱いと安全対策が不可欠です。

関連物質と参考文献

化学構造の類似性から、1,2-ジクロロプロパンとの比較検討が重要となります。より詳細な情報については、『農薬毒性の事典 改訂版』（植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著、三省堂、2002年）や国際化学物質安全性カードなどの資料を参照ください。

結論

1,3-ジクロロプロペンは、土壌線虫防除に有効な化合物ですが、その引火性、爆発性、そして人体や環境への潜在的な危険性を十分に認識し、適切な取り扱い、安全対策、そして環境への配慮が不可欠です。将来的な代替物質の開発や、より安全な使用方法の確立が、持続可能な農業の実現のために求められています。

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