1,4-ブタンジオール

1,4-ブタンジオールについて

1,4-ブタンジオール（1,4-Butanediol）は、有機化合物であり、主にプラスチックや繊維の製造に利用されています。また、鎮静効果があるため、向精神薬としての側面も持っています。これは、ブタンジオールの中で4つ存在する異性体の一つで、無色透明で高粘度の液体です。この物質は、特にポリブチレンテレフタレート（PBT）のようなプラスチックの原料として使用される他、体内でγ-ヒドロキシ酪酸（GHB）に代謝されることも特徴です。GHB自体は向精神作用を持つため、1,4-ブタンジオールには潜在的な危険性が伴います。

合成方法

工業的な合成法として一般的なのは、アセチレンを2当量のホルムアルデヒドと反応させることで得られる1,4-ブチンジオールを水素化する方法です。これにより、1,4-ブタンジオールが生成されます。また、エステルとマレイン酸またはコハク酸の無水物を気相で水素化しても合成が可能です。1982年には三菱化学がブタジエンを原料とする新しい合成法を工業化しました。この方法では、パラジウム触媒を用いて1,4-ジアセトキシ化し、その後、還元と加水分解を行って1,4-ブタンジオールに至ります。

利用方法

工業用途としては、1,4-ブタンジオールは典型的な溶媒としての役割を果たし、特にPET樹脂などのプラスチックや繊維の原料として広く利用されています。リン酸と共に高温で脱水させることで、重要な溶媒であるテトラヒドロフランが生成されます。さらに、NMPやNVPの前駆体であるγ-ブチロラクトンの原料としても使用されます。特に、ルテニウム触媒による約200℃での反応では、ジオール部分が脱水素化されγ-ブチロラクトンが生産されます。また、この化合物は向精神薬としても知られており、GHBと似た作用を持つことが分かっています。報告によれば、1,4-ブタンジオールは吸収時にGHBに変換されなくても強い感覚を与える場合があることが指摘されています。この物質の乱用は、中毒や死亡という深刻な結果を引き起こす可能性もあります。

薬物動態

1,4-ブタンジオールは体内でアルコールデヒドロゲナーゼとアルデヒドデヒドロゲナーゼの作用によりGHBに変換されます。この2つの酵素の比率が個人差に影響を及ぼし、薬理作用や副作用の強さが変わってくると考えられています。

2007年の事件

2007年には、オーストラリアで販売された中国製玩具「Bindeez」に1,4-ブタンジオールが含まれていたため、問題が発生しました。この玩具は少量の水の中に浮くビーズから1,4-ブタンジオールが検出され、回収されました。これは、製造過程でコスト削減のために1,5-ペンタンジオールの代わりに使用された可能性があるとされています。

薬理作用

この化合物は2つの異なる薬効を持つと考えられています。主な効能は代謝物のGHBによるものですが、GHBに変換されなくてもアルコール様の薬理作用が示されることもあるのです。

規制状況

アメリカでは、政府による1,4-ブタンジオールの特別な規制はありませんが、一部の州では規制対象となっています。日本においても現在は規制がなく、脱法ドラッグの一種として流通しています。これにより、一定のリスクを伴っていることに注意が必要です。

まとめ

1,4-ブタンジオールは、工業的な応用が広い一方で、精神作用や健康への影響も考慮する必要がある化合物です。使用や取扱いには十分な注意が求められます。

もう一度検索