マレイン酸

マレイン酸とは

マレイン酸（マレインさん、Maleic acid）は、分子構造が HOOC–CH=CH–COOH という形をした鎖状の不飽和ジカルボン酸で、特にシス体に分類されます。同じ示性式を持つものの、トランス型にあたるフマル酸と対比されます。IUPAC名はcis-butenedioic acid（cis-ブテン二酸）として知られています。この名称「マレイン酸」は、化合物がリンゴ酸（malic acid）の脱水反応によって得られたことを踏まえ、化学者テオフィル＝ジュール・ペルーズによって名付けられました。

化学的性質

マレイン酸は二価のカルボン酸で、ジカルボン酸としての特性から、非常に水に溶けやすいという性質があります。具体的には、25度で78g/100mLの溶解度を示します。また、この化合物の幾何異性体としてトランス型のフマル酸がありますが、彼らは初めて発見された幾何異性体のペアとして知られています。

マレイン酸に関して特筆すべきは、加熱によって135℃で分解し、環状の無水マレイン酸が形成される点です。これは、マレイン酸のカルボキシ基同士が近接する構造を持つためです。加えて、フマル酸の場合はカルボキシ基が距離を置いているため、このような環状構造には変化しません。

利用方法

マレイン酸は、医薬品の製造において広く利用されます。例えば、抗ヒスタミン薬として知られるマレイン酸クロルフェニラミン（クロルフェニラミンマレイン酸塩）は、アレルギーの症状を緩和するために使用されます。また、同じく抗ヒスタミン薬であるマレイン酸フェニラミン（フェニラミンマレイン酸塩）や、マレイン酸カルビノキサミン（カルビノキサミンマレイン酸塩）も存在します。

さらに、マレイン酸は子宮収縮剤であるメチルエルゴメトリンマレイン酸塩や、Β遮断薬のチモロールマレイン酸塩（マレイン酸チモロール）にも用いられます。加えて、消化管に関連するトリメブチンマレイン酸塩（マレイン酸トリメブチン）や、高血圧の治療に用いられるエナラプリルマレイン酸塩（マレイン酸エナラプリル）など、さまざまな医薬品にマレイン酸が取り入れられていることがわかります。

まとめ

マレイン酸はそのシス体の特性から、医療分野での重要な用途を有する化合物です。高い水溶性や特異な熱分解特性が、医薬品製造においての利用を促進しています。これらの特性を理解することで、マレイン酸の役割や重要性をしっかりと把握することができるでしょう。

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