10 WINGS

中島みゆきの『10 WINGS』は、1995年10月20日にリリースされた23枚目のオリジナルアルバムです。この作品は、1989年から毎年12月に東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演されていた実験的音楽劇『夜会』のために書き下ろされたオリジナル作品10曲を、新たに再録音して発表したセルフカバーアルバムという位置づけです。

このアルバムの発表後、中島みゆきは舞台への活動に傾倒していくことになります。本作が発表された1995年の『夜会 Vol.7 2/2』以降は、再演と「二隻の舟」を除き、すべての演奏曲が書き下ろし作品となりました。そして、『日-WINGS』『月-WINGS』といったアルバムの続編的作品も制作されました。

『10 WINGS』の特徴として、収録曲の大半が7分以上という点が挙げられます。2021年現在、オリジナルアルバムとしては全体の収録時間が最も長い作品となっています。これは、中島みゆきがそれぞれの楽曲に込めた深いメッセージと、舞台作品としての世界観を余すところなく表現しようとした結果と言えるでしょう。

発売当時のインタビューで、中島みゆきは「歌を自由にしてあげようとはじめた夜会だが、オリジナル曲は物語の場面に閉じ込められてしまった。それらを一曲の楽曲としても（翼で羽ばたくように）自由に聴いてほしかった」と語っています。この言葉からは、彼女が『夜会』という舞台作品から生まれた楽曲たちを、アルバムという形で新たな命を吹き込み、より自由に、より多くの人に届けたいという強い思いが伝わってきます。

また、このアルバムから、楽曲に英語のタイトルが付くようになったのも特徴の一つです。

発売形態は、CD、APO（Audio Presentation Object）、コンパクトカセットの3種類でした。本作を最後に、オリジナルアルバムのコンパクトカセットによる販売は終了しています。現行盤のCDは2001年にヤマハミュージックコミュニケーションズから発売されたものです。

収録曲について

二隻の舟: 1989年の初演から歌われ続けてきた『夜会』のテーマ曲。アルバム『EAST ASIA』にも収録されていましたが、本作でリメイクされました。ベストアルバム『大銀幕』に収録されている「二隻の舟」はこのアルバムのバージョンです。
思い出させてあげる: 1994年上演の『夜会Vol.6 シャングリラ』で発表されたオリジナル曲。1998年のコンサートツアーでも歌われました。
泣かないでアマテラス: 1992年上演の『夜会Vol.4 金環蝕』で歌われた作品。岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』の劇中で挿入歌として使用されました。1997年のコンサートツアーでも歌われています。
Maybe: 1990年上演の『夜会1990』で披露された作品。アルバム『歌でしか言えない』にほぼ同じアレンジで再録音・発表され、シングルカットもされました。本作のアレンジは、『歌でしか言えない』やシングルのものとは異なります。
ふたりは: アルバム『夜を往け』に収録されていた作品で、『夜会1990』でも歌われました。世良公則がデュエットでゲスト参加しています。
DIAMOND CAGE: 1992年上演の『夜会Vol.4 金環蝕』で歌われた作品。夜会では最後に歌われていた歌詞がこのCDでは歌われていません。
I Love Him: 1991年上演の『夜会Vol.3 KAN(邯鄲)TAN』で歌われた作品。
子守歌: 1994年上演の『夜会Vol.6 シャングリラ』で発表されたオリジナル曲。
生きてゆくおまえ: 1994年上演の『夜会Vol.6 シャングリラ』で発表されたオリジナル曲。
人待ち歌: 1993年上演の『夜会Vol.5 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に』で歌われていた曲。

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