100メガビット・イーサネット

100メガビット・イーサネット（100MbE）とは

100メガビット・イーサネット（100MbE）は、100Mbpsのデータ転送速度を実現するイーサネット規格の総称です。一般的にはファーストイーサネット（Fast Ethernet, FE）とも呼ばれます。

物理層規格の種類

2015年までに標準化された100MbEの物理層規格には、以下のようなものがあります。

100BASE-TX
1995年にIEEE 802.3uとして標準化された、最も一般的な規格です。カテゴリ5以上のUTPケーブルを使用し、最大100mの接続が可能です。ツイストペアケーブルの2対4線を使用し、全二重通信を実現します。4B5B変換とMLT-3符号化方式を採用しています。家庭内LANで広く使われています。

100BASE-T4
1995年にIEEE 802.3uとして標準化されましたが、2003年に更新が停止しました。カテゴリ3のUTPケーブルを使用し、半二重通信をサポートします。ツイストペアの4対8線全てを使用し、8B6T符号化とPAM3変調を組み合わせることで100Mbpsの速度を実現していました。

100BASE-T2
1997年にIEEE 802.3yとして標準化され、2003年に更新が停止しました。カテゴリ3のUTPケーブルで全二重通信を可能にしました。ハイブリッド回路でエコー除去を行い、PAM5変調でデータ伝送を行いました。この技術の一部は、後発の1000BASE-Tに流用されています。

100BASE-T1
2015年にIEEE 802.3bwとして標準化された、シングルペアイーサネットの一種で、主に車載ネットワーク向けに開発されました。BroadR-Reachという名称で知られています。ツイストペアケーブル1対2線を使用し、最長15mの接続が可能です。4b/3b変換、スクランブル処理、3B2T変換、PAM3変調を組み合わせてデータ伝送を行います。PoDL（Power over Data Lines）による給電にも対応しています。

100VG-AnyLAN
1995年にIEEE 802.12として標準化されましたが、2001年に更新が停止しました。ヒューレットパッカード社が提案した100BASE-VGが前身です。カテゴリ3ケーブルを使用し、トークンリングによる巡回方式で半二重通信を実現します。スイッチングハブでトークンリングを形成し、CSMA/CD|CSMA_CDの弱点を克服しました。イーサネットフレームとトークンリングフレームの両方をサポートしています。しかし、市場では100BASE-TXに敗れました。

100BASE-FX
1995年にIEEE 802.3uとして標準化されました。光ケーブルを伝送路として使用し、マルチモードファイバーで2kmまで接続可能です。FDDIの仕様を流用し、4B5B変換とNRZI符号化を採用しています。

100BASE-LX10
2004年にIEEE 802.3ahとして標準化されました。光ケーブルとシングルモードファイバーを使用し、10kmまで接続可能です。さらに長距離に対応した100BASE-EX (40km) や100BASE-ZX (70km-120km) の実装も存在します。

100BASE-BX10
2004年にIEEE 802.3ahとして標準化されました。1本のシングルモードファイバーで10kmまで接続可能です。異なる波長を使用することで双方向通信を実現しており、100BASE-BX10-Dと100BASE-BX10-Uの2種類があります。

各規格の詳細

100BASE-TXは、ファーストイーサネットの主流で、家庭やオフィスで広く使われています。10BASE-Tと同様に、ツイストペアケーブルの2対4線を使用しますが、より高速なデータ転送に対応するため、MLT-3符号化を使用しています。これにより、信号の周波数を低く抑えつつ、高いデータ転送速度を達成しています。

100BASE-T4は、カテゴリ3のUTPケーブルでも100Mbpsの通信を実現するために開発されました。4対のツイストペアケーブルを全て使用し、独自の符号化方式を用いることで100Mbpsの速度を実現していました。

100BASE-T2は、カテゴリ3ケーブルで全二重通信を可能にした規格で、エコーキャンセレーション技術を使用しています。この技術は、後の1000BASE-Tでも使用されるようになりました。

100BASE-T1は、自動車など、厳しい環境下での使用を想定した規格です。シングルペアケーブルでデータ通信を行うため、ケーブルの軽量化、省スペース化に貢献します。また、電力線とのデータ伝送の共用化も可能です。

100VG-AnyLANは、トークンリング方式を採用した点が特徴です。各端末の送信要求を巡回することで、ネットワーク全体の効率を向上させ、衝突による再送をなくし、安定した通信を実現しました。しかし、コスト面で不利だったため、市場では普及しませんでした。

100BASE-FXは、光ファイバーケーブルを使用することで、長距離のデータ伝送を可能にしました。ノイズの影響を受けにくく、信頼性の高い通信が可能です。

100BASE-LX10は、シングルモードファイバーを使用することで、より長距離のデータ伝送に対応した規格です。100BASE-EXや100BASE-ZXは、さらに長距離の伝送を可能にするためのベンダ独自の拡張規格です。

100BASE-BX10は、1本の光ファイバーケーブルで双方向通信を実現する規格です。波長分割多重技術により、異なる波長で送受信を行うことで、ケーブルの本数を減らすことができます。

まとめ

100メガビット・イーサネットは、多様な物理層規格を持ち、様々な用途や環境に対応しています。これらの規格は、有線ネットワークの基礎を形成し、今日のインターネットを支える重要な技術の一つと言えるでしょう。

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