1000の小説とバックベアード

概要

『1000の小説とバックベアード』は、佐藤友哉が2006年に発表した長編小説で、2008年に三島由紀夫賞の受賞を果たし、さらに大学読書人大賞でも評価を受けた作品です。具体的には、特定の個人に向けた集団執筆によって物語を完成させるという架空の職業「片説家」にクビになった主人公が、謎の依頼によって小説家を目指すストーリーが展開されます。著者は新本格ミステリのスタイルを取り入れながら、従来の私小説とは一線を画した作風を貫いています。

評価

三島由紀夫賞の選考では、投票した委員の中で宮本輝を除く4名から支持を集め、受賞が決定しました。その評価は一部の点では厳しいもので、文学史に対するアプローチが不十分であるとの批判も見受けられましたが、自由で新鮮なスタイルが評価され、ジャンルを超えた広がりも認められました。

ストーリーの展開

物語は、27歳の誕生日に勤務先「ティエン・トゥ・バット」を解雇された主人公、木原から始まります。彼は文章を創り出す能力と、文字を理解する力を失ってしまい、途方に暮れます。そんな時、配川ゆかりと名乗る人物から小説執筆の依頼を受けます。依頼の内容は、彼女の妹・つたえの行方を探る探偵への依頼と一緒に、小説を書くことでした。

木原は執筆作業に苦しみ、作業を進めるために文豪が宿泊することで知られる山の上ホテルに「缶詰」を試みますが、進捗は芳しくありません。すると、配川が木原を再訪し、妹から送られたというDVDを持参します。その映像は視聴者に強烈な感情や性的快感を引き起こす内容であり、実は『日本文学』が制作したものでした。このDVDがきっかけで、探偵の一之瀬とともに、トラブルを引き起こしながらもティエン・トゥ・バットを襲撃する計画が進行します。

次第に、木原は自宅で片説家を名乗る不審者に襲撃され、執筆に専念するためにビジネスホテルに移りますが、すぐに見つかってしまいます。その後、オールデンの革靴を履いた男に拉致され、バックベアードが支配する地下図書館に監禁される危機に直面します。

登場人物

• - 木原: 片説家としての職を失った主人公で、小説の執筆と妹の捜索に奮闘します。
• - 配川ゆかり: 神秘的な依頼者で、木原に小説を書くよう促します。
• - 一之瀬: 探偵で、物語における助け手です。
• - 配川つたえ: ゆかりの失踪した妹で、物語の鍵を握る存在です。
• - バックベアード: 京王プラザホテルの地下に図書館を築き、木原たち「失格者」を拘束します。

この作品は、文学とミステリの交差点を描きつつ、物語の本質を問いかける深い内容となっています。

もう一度検索