1917年の日本公開映画

1917年（大正6年）の日本における商業公開映画に関連する事柄を解説します。この年は、後の日本映画史において重要な転換点となった出来事が集中した年と言えるでしょう。

検閲制度の確立

まず、映画に対する本格的な検閲制度の導入が挙げられます。それまで映画の取締は、劇場取締規則に基づく臨検や、各地の警察署による個別の規制にとどまり、統一性に欠けていました。しかし、この年には各府県が独自の活動写真興行取締規則を定め始め、特に東京では1917年7月以降、警視庁が一元的なフィルム事前検閲を開始しました。この新しい規制には、作品公開の許認可、内容による等級分け（甲種・乙種）、男女別の観覧席の設置義務、さらには活動弁士の免許・鑑札制度などが含まれていました。これらの措置は、当時急速に発展していた映画産業に対する権力側の対応を示すものでしたが、取締体制にはなお地域ごとの差異が残されており、完全に統一された制度とは言えませんでした。このような府県単位の規制体系は、映画が全国津々浦々に普及した後も続き、最終的に内務省警保局に検閲権限が移管される1935年まで継続されました。

表現技術の革新

技術や表現の面でも新たな動きがありました。映画理論家の帰山教正は、1917年に自身初の映画理論書『活動写真劇の創作と撮影法』を発表しました。その後、帰山は天活（天然色活動写真株式会社）に入社し、それまでの日本映画とは一線を画す、海外市場を意識した作品の製作に取り組み始めました。その成果として、翌1918年に公開された『生の輝き』と『深山の乙女』があります。これらの作品の製作過程では、西洋映画では一般的であったシナリオの作成、出演者による本読み、そして当時主流だった女形ではなく女性俳優を起用する試み、さらにクローズアップやロングショットといった多様なカメラワークが、日本映画として初めて積極的に採用されました。これらの革新的な手法は、その後の日本映画の表現技法に大きな影響を与えることとなりました。

商業アニメーションの誕生

さらに、1917年は日本の商業アニメーション映画が産声を上げた年としても特筆されます。厳密には、後のアニメーション産業との直接的な繋がりが不明瞭な個人製作の玩具映画や巡回上映向けの作品も存在しましたが、この年に下川凹天、北山清太郎、幸内純一といったパイオニアたちが商業公開された一連のアニメーション作品こそが、今日の日本アニメーションの源流と位置づけられています。興味深いことに、この三人はほぼ同時期に、お互いの協力を得ることなく独力でアニメーション制作に着手したとされています。そのため、彼ら三人それぞれが、日本における商業アニメーションの創始者と広く認識されているのです。

まとめ

このように、1917年は日本映画が制度的な枠組みを整え、表現の幅を広げ、新たな分野であるアニメーションを生み出した、まさに黎明期における重要な一年であったと言えるでしょう。

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