1920年ドイツ国会選挙

1920年6月6日ドイツ国会選挙：ヴァイマル共和国の危機

1920年6月6日、ドイツで国会選挙が行われました。これは、第一次世界大戦後のドイツにおける政治情勢を大きく反映した重要な選挙でした。この選挙は単なる議会選出以上の意味を持ち、ヴァイマル共和国の将来を大きく左右する転換点となりました。

選挙制度と背景

この選挙は、1919年に成立したヴァイマル憲法に基づいて実施されました。前回の国会選挙は「ドイツ国民議会」として行われましたが、今回はドイツ帝国時代の名称「国会（Reichstag）」に戻り、帝国憲法下での議会制民主主義の確立を目指した選挙と言えるでしょう。しかし、この時点でのドイツは、大戦敗北による混乱、経済的困難、社会不安など、極めて不安定な状況にありました。こうした状況は、選挙結果に大きく影響を与えることとなります。


ヴァイマル共和国否定派の躍進

選挙の結果、ヴァイマル共和国を否定する勢力が大きく躍進しました。特に、以下の政党の躍進が目立ちました。

ドイツ独立社会民主党 (USPD): プロレタリア独裁を掲げ、ヴァイマル共和国の資本主義体制を批判。
ドイツ国家人民党 (DNVP): 帝政復古を主張し、共和制への強い反感を表明。
ドイツ人民党 (DVP): 右派自由主義政党でありながら、共和制への懐疑的な姿勢を示した。


これに対し、ヴァイマル共和国を支持する与党勢力は、軒並み議席を減らしました。

ドイツ社会民主党 (SPD): ヴァイマル共和政の主要支持政党であったが、議席数を大きく減らし、勢力を落とした。
中央党 (Zentrum): カトリック系の政党で、比較的穏健な立場をとっていたが、支持層の減少が顕著だった。
ドイツ民主党 (DDP): 自由主義政党も、他の与党同様議席を減らし、影響力を低下させた。


この結果、議会における勢力バランスは大きく変化し、ヴァイマル共和国の安定性に深刻な影を落とすことになります。


注目すべき当選議員

この選挙では、後にドイツ史において重要な役割を果たす多くの政治家が初当選を果たしました。

アルトゥール・クリスピン (USPD): 急進的な社会主義者として知られ、後にドイツ共産党に合流。
ヘルマン・ミュラー (SPD): 後にドイツ首相を務めることになる、社会民主党の中心人物。
パウル・レヴィ (KPD): ドイツ共産党の指導者の一人として、共産主義運動を牽引。
クララ・ツェトキン (KPD): 女性参政権運動の活動家として知られ、国際社会主義運動にも貢献した。


これらの政治家の台頭は、ドイツ政治の激動を象徴する出来事と言えるでしょう。


選挙結果の分析と影響

1920年6月6日の国会選挙は、ヴァイマル共和国に対する国民の支持基盤の弱さと、極端な政治勢力の台頭を明確に示しました。選挙結果は、共和国の安定を脅かす大きな要因となり、後の政治的混乱やナチズムの台頭につながる過程に大きな影響を与えたと考えられます。


参考文献

林健太郎著『ワイマル共和国 ヒトラーを出現させたもの』（中公新書）
阿部良男著『ヒトラー全記録 20645日の軌跡』

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