1923年のル・マン24時間レース

1923年ル・マン24時間レース：黎明期の激闘

1923年5月26日から27日にかけて、フランスのサルト・サーキットで開催された第1回ル・マン24時間レースは、自動車レース史に新たな1ページを刻みました。この記念すべき最初のレースは、天候に恵まれない中、多くのドラマを生み出しました。

激戦の舞台：サルト・サーキット

当時、フランスでは多くの自動車メーカーがしのぎを削っており、本レースにもフランス国内から16メーカー、ベルギーとイギリスから各1メーカーの計18メーカー、33台のマシンが参加しました。当初は35台の参加予定でしたが、2台が欠場しました。

レースは、現代のようなル・マン式スタートではなく、グリッドからのスタンディングスタート方式が採用されました。2人のドライバーが4時間ごとに交代し、燃料、オイル、水の補給、そしてマシンの点検や修理は、2人のドライバーのみに許されていました。

悪天候と激闘

レース中、激しい雨が降り注ぎ、ドライバーたちは困難な状況に直面しました。特に注目すべきは、唯一のイギリス勢として参戦したジョン・ダフとフランク・クレモン組のベントレー3リットルです。彼らは燃料タンクの故障によりガソリン漏れに見舞われましたが、23時間走行時点では平均速度107.328km/hを記録し、当時のコースレコードを樹立しました。しかしながら、このトラブルによって優勝は逃しました。

フランス勢の圧倒的勝利

悪天候の中、30台のマシンが完走を果たしました。優勝は、アンドレ・ラガシェとルネ・レオナール組がドライブしたシェナール・ウォルカーでした。彼らは2,209.536kmを平均速度92.064km/hまたは92.536km/hで走行し、栄冠を手にしました。2位と3位もシェナール・ウォルカーとビグナンがそれぞれ獲得し、フランス勢が表彰台を独占する結果となりました。4位には、24時間で1,933.344kmを平均速度80.556km/hで走行したベントレー3リットルが入賞しました。

黎明期のル・マン：その意義

この第1回ル・マン24時間レースは、黎明期の自動車レースにおいて大きな意味を持ちます。多くのメーカーが参加し、悪天候の中での耐久レースは、自動車技術とドライバーの技量の両方を試す厳しい舞台となりました。このレースを機に、ル・マン24時間レースは世界的な自動車レースとして発展していく礎が築かれました。そして、このレースは、イギリス勢を含む国際的な競争の始まりを示唆するものでもありました。

参考文献

『ルマン 伝統と日本チームの戦い』グランプリ出版 ISBN 4-87687-161-2
ドミニク・パスカル著、日沖宗弘訳『ル・マンの英国車』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-068-8
* 黒井尚志『ル・マン 偉大なる草レースの挑戦者たち』集英社 ISBN 4-08-780158-6

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