1935年の日本競馬

1935年（昭和10年）は、日本競馬界において、その統制と改善に向けた重要な議論が活発に行われた年となりました。特に、競走の公正性を巡る課題や、国の馬政計画との連携が焦点となりました。

主要な出来事

年の初めから、競馬の運営に関する具体的な検討が進められました。

1月：
1月7日、中山競馬倶楽部の理事会は、発走や審判に多くの問題が指摘されていた速歩競走について、勝馬投票券の発売を停止する方針を決定しました。
1月25日、帝国競馬協会の定期総会で、この中山競馬倶楽部の決定の是非が主要な議題として審議されました。
3月：
3月27日、農林大臣は第3次馬政調査会に対し、国の馬政に関する新たな計画要綱案（第2次）を諮問しました。調査会は3月29日まで審議を行い、その後、松平頼寿を委員長とする特別委員会が設置され、答申案の策定を担うこととなりました。
9月：
9月5日、松平頼寿委員長率いる特別委員会が3日間にわたり開催され、馬政計画に関する答申案が作成されました。この答申案には「付帯希望決議」として、競馬の統制や改善について「政府は速やかに適切な措置を講じるべきである」という強い要望が盛り込まれました。
この時期、福島競馬倶楽部では土地収用が大半完了し、固定障害馬場が新設されました。
10月：
10月8日、帝国競馬協会は第1回競馬研究会を開催し、速歩競走における不正行為の防止策について集中的に協議を行いました。
11月：
11月28日、東京・中山・日本レースの主要3競馬倶楽部は、速歩馬の出走禁止に関する共通基準を設けるための協定を結びました。これは、いずれか一つの倶楽部で処罰を受けた速歩馬が、他の二つの倶楽部でも一定期間レースに出られないようにすることで、不正行為の抑止を図るもので、この協定の認可を申請しました。
12月：
12月11日、帝国競馬協会の参事会で競馬法の改正に向けた協議が行われ、協会として国へ上申する案が可決されました。
12月12日、帝国競馬協会の松平頼寿理事長は、農林省の田淵敬治畜産局長に対し、前日可決された上申書を提出しました。その主な内容は、勝馬投票券の額面引き上げ、競馬場用地取得における土地収用制度の適用、競馬運営の自治を尊重しつつ統制を強化すること、そして場外馬券取引（ノミ行為）の取り締まり強化など多岐にわたりました。
12月18日、第5回馬政調査会において、農林大臣から改めて競馬の統制改善に関する諮問が出されました。この会議では国営化を含む様々な統制策が議論されましたが、この時点では結論には至らず、引き続き翌年以降も審議されることとなりました。

その他の動向

小倉競馬倶楽部は春季開催に向けて厩舎3棟と医務室を新たに建設しました。
日本レース・クラブは同年の秋季開催より、距離2800メートルの牝馬限定特別競走を新設しました。
京都競馬倶楽部も同年の秋季開催から、距離2700メートルの阪神記念アラブ系抽籤馬競走を新設しました。
この年から、中山大障碍競走には農林省賞典が授与されることとなりました。

主な競走成績

第4回東京優駿大競走（東京競馬場、4月29日）
優勝：ガヴアナー（騎手：井川為男）
第2回中山大障碍特別（中山競馬場、4月7日）
優勝：イサハヤ（騎手：秋山辰治）
第3回農林省賞典障碍（中山競馬場、10月20日）
優勝：オーシス（騎手：佐藤修）

競馬界で生まれた人々・馬

競走馬：スゲヌマ（4月7日）、アステリモア（4月19日）、テツモン（生月日不明）
人物：高木嘉夫（4月9日）、中尾銑治（7月3日）、新関力（8月18日）、大久保正陽（8月23日）、古賀一隆（8月30日）、北橋修二（9月10日）、成宮明光（11月2日）、加藤修甫（11月19日）、松田正弘（12月13日）

競馬界で亡くなった人々

（この年に関する特筆すべき記載はありませんでした。）

1935年は、速歩競走の問題への具体的な対応策、そして政府主導による馬政計画の一環としての競馬統制のあり方、さらには競馬法改正に向けた議論が進められた、日本競馬が制度的な転換期を迎える上で重要な基礎が築かれた一年と言えるでしょう。

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