1937年の日本公開映画

1937年の日本公開映画

1937年（昭和12年）は、日本国内で多種多様な映画作品が商業的に公開された年でした。この一年間、日本で製作された作品に加え、アメリカやヨーロッパを中心とした多くの外国映画が日本の観客に届けられました。

年間を通じて、ほぼ毎月新しい作品が封切られており、特に特定の週や日に複数の作品がまとめて公開されることも珍しくありませんでした。公開された作品の製作国は、日本とアメリカが大部分を占めていましたが、フランス、ドイツ、イギリス、オーストリアといったヨーロッパ諸国や、チェコスロバキア、イタリア、スイスなど、様々な国で製作された映画も紹介されています。

この年に公開された日本映画の中からは、その年の優れた作品として多くのものが評価されています。例えば、山中貞雄監督の『限りなき前進』はキネマ旬報ベストテンで第1位に選ばれるなど、高い評価を得ました。他にも、内田吐夢監督の『蒼氓』（2位）、溝口健二監督の『愛怨峡』（3位）、清水宏監督の『風の中の子供』（4位）、内田吐夢監督の『裸の町』（5位）、島津保次郎監督の『若い人』（6位）、山中貞三監督の『人情紙風船』（7位）、小津安二郎監督の『淑女は何を忘れたか』（8位）、稲垣浩監督の『大阪夏の陣』（9位）、五所平之助監督の『浅草の灯』（10位）など、多彩な監督による作品がベストテンにランクインしています。時代劇から現代劇、文芸作品まで、幅広いジャンルの作品がこの年に公開されたことがわかります。また、『戦国群盗伝』や『丹下左膳』、『真実一路』、『母の曲』のような前後篇に分かれた作品や、『美しき鷹』のような複数社による競作、記録映画『怒濤を蹴って』なども公開されています。

一方、日本に輸入され公開された外国映画も注目すべきものが多数ありました。フランス映画のジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品『女だけの都』はキネマ旬報ベストテン外国映画部門の第1位を獲得しています。その他にも、同監督の『我等の仲間』（2位）や『どん底』（3位）など、フランス映画が強い存在感を示しました。アメリカ映画からは、『孔雀夫人』（4位）、『明日は来らず』（5位）、『大地』（7位）、『激怒』（10位）などがベストテン入りしています。ヨーロッパ各地からも、『禁男の家』（フランス、6位）、『巨人ゴーレム』（フランス、チェコスロバキア、8位）、『暗黒街の弾痕』（アメリカ、9位）といった作品が公開されました。これらの外国映画は、ドラマ、コメディ、アクション、ミュージカルなど、多様なジャンルにわたっており、当時の日本の観客が世界の様々な映画文化に触れる機会となっていたことがうかがえます。なお、この年に公開された『オーケストラの少女』（アメリカ）は、翌1938年度のキネマ旬報ベストテン外国映画部門で第2位に選ばれています。

1937年に日本で公開されたこれらの映画作品群は、国内外の映画製作が盛んであった当時の状況、そして多様な作品が国境を越えて紹介されていた映画文化の一端を今日に伝えています。映画芸術の発展とともに、娯楽としての映画が広く受け入れられていた時代を象徴する年の一つと言えるでしょう。

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