愛怨峡

『愛怨峡』（あいえんきょう）は、1937年に公開された溝口健二監督による日本のドラマ映画です。原作はレフ・トルストイの小説『復活』で、川口松太郎が翻案した脚本をもとに制作されました。映画は、社会の底辺で生きる人々の苦悩や葛藤、そして愛憎を描き出しており、そのリアリティ溢れる描写は、観る者に深い感動と衝撃を与えます。

物語の背景

舞台は、昭和初期の日本。激動の時代の中で、貧困や格差、社会の矛盾が人々の生活を大きく揺さぶっていました。そのような時代背景の中、主人公たちはそれぞれの運命に翻弄されながらも、懸命に生きています。

主要な登場人物

村上ふみ（山路ふみ子）: 主人公の一人。悲劇的な運命を背負い、愛と憎しみの間で苦悩する女性。彼女の心の葛藤は、物語の大きな軸となります。
鈴木芳太郎（河津清三郎）: ふみの恋人。しかし、社会的な地位や環境の違いから、二人の関係は複雑に絡み合っていきます。
滝沢謙吉（清水将夫）: 旅館の若主人で、ふみに恋心を抱く。彼の純粋な愛情が、物語に新たな展開をもたらします。


映画の特徴

リアリズム: 溝口健二監督は、徹底したリアリズムを追求し、当時の社会や人々の生活をありのままに描きました。そのため、観客は映画の世界に深く没入することができます。
緻密な演出: 登場人物の心理描写、映像の美しさ、音楽の使い方など、細部にまでこだわり抜かれた演出が、映画の完成度を高めています。
社会的なメッセージ: 貧困や格差、社会の矛盾といった問題に焦点を当てることで、観客に現代社会における様々な問題について考えさせるきっかけを与えています。

映画の評価

『愛怨峡』は、公開当時から高い評価を受け、1937年度のキネマ旬報賞では日本映画ベストテン3位に選ばれました。現在でも、日本映画史に残る傑作として、多くの映画ファンに愛されています。

スタッフ

監督:溝口健二
脚本:依田義賢、溝口健二
原作:川口松太郎
撮影:三木稔
美術監督:水谷浩
音楽:宇賀神味津男

キャスト

山路ふみ子
河津清三郎
清水将夫
三桝豊
明晴江
加藤精一
田中春男
野辺かほる
浦辺粂子
大泉慶治
菅井一郎
大友壮之助
大川修一
鳥橋弘一
田中筆子
上田寛
ジョー・オハラ
奈美乃一郎
瀧鈴子

受賞歴

1937年度 第14回キネマ旬報賞 日本映画ベスト・テン3位

外部リンク

愛怨峡 - allcinema
愛怨峡 - 日本映画データベース
愛怨峡 - KINENOTE
The Straits of Love and Hate (1937) - IMDb
愛怨峽 - 国立映画アーカイブ
愛怨峡 - 文化庁日本映画情報システム

『愛怨峡』は、溝口健二監督の才能と情熱が注ぎ込まれた、感動的なドラマ映画です。ぜひ、一度ご覧ください。

もう一度検索