1938年ドイツ国会選挙

1938年ドイツ国会選挙：ナチス独裁体制下の最後の選挙

1938年4月10日、ナチス・ドイツにおいて国会選挙が実施されました。しかし、この選挙は、1933年にアドルフ・ヒトラーが政権を掌握して以降、ナチ党以外の全ての政党が解散させられていたため、事実上、ナチ党の勝利を決定づけた形式的な選挙でした。この選挙は、第二次世界大戦勃発前のドイツにおける最後の国政選挙という歴史的意義を持っています。

選挙においては、ナチ党のみが出馬し、他の政党は参加を許されませんでした。国民は、ナチス政権の支配下にあり、自由な意思表示を行うことは不可能な状況下に置かれていました。そのため、選挙結果はナチ党の圧倒的勝利という結果に終わることは、最初から明白でした。この選挙は、ナチス政権による民主主義の破壊と、国民への抑圧を象徴する出来事でした。

この選挙の背景には、ナチス・ドイツによるオーストリア併合（アンシュルス）と、チェコスロバキアのズデーテン地方併合がありました。オーストリアでは、国会選挙の代わりに、アンシュルスの是非を問う国民投票が行われ、ナチ党組織と行政組織による厳重な監視の下、99.73％もの圧倒的な賛成票を獲得しました。これは、国民投票という形をとりながらも、自由な意思に基づくものではなく、ナチス政権による強制的な結果であったと言えるでしょう。

ズデーテン地方併合後には、1938年12月5日に同地方で国会選挙が行われました。また、1939年4月には、リトアニアから返還されたメーメル地方（クライペダ地方）からも2名の議員が選出されています。これらの選挙は、ナチス・ドイツによる領土拡大と、その支配の拡大を象徴するものです。

国会議員の任期は4年と定められていましたが、第二次世界大戦の激化に伴い、1943年1月25日、ヒトラーは国会議員選挙の延期を決定する法律に署名しました。新たな選挙日は1947年1月30日とされましたが、1945年5月7日にドイツが第二次世界大戦で敗戦を迎えたため、選挙は実施されることなく、ナチス・ドイツは崩壊しました。

戦後、ドイツは東西に分断され、1949年8月14日に西ドイツで初めて自由な国政選挙（ドイツ連邦議会選挙）が行われました。この選挙は、ナチス時代の独裁政治からの脱却と、民主主義の回復を象徴する重要な出来事でした。1938年の選挙と比較すると、その違いは歴然としており、民主主義の重要性と自由な選挙の価値を改めて認識させるものです。

1938年ドイツ国会選挙は、ナチス・ドイツの全盛期における、国民の意思を無視した形式的な選挙でした。この選挙は、ナチス政権による独裁体制を象徴するだけでなく、民主主義の崩壊と戦争への道を示す、歴史的な転換点として、後世に語り継がれるべき出来事と言えるでしょう。

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