1945年ダム広場銃撃事件

1945年ダム広場銃撃事件：解放の歓喜が悲劇に変わった日

1945年5月7日、第二次世界大戦末期、オランダ・アムステルダムのダム広場で起こった銃撃事件は、終戦と解放を待ち望む人々を深い悲しみに突き落としました。この事件は、解放の喜びに沸く群衆にドイツ海軍の兵士が機関銃を乱射したという悲劇です。

事件の背景

1945年5月5日、オランダに駐留していたドイツ軍は連合国軍に降伏しましたが、西オランダは連合国軍が到着し武装解除が完了するまで、ドイツ軍の占領下にありました。5月6日、地元紙はカナダ軍が翌日アムステルダムに到着すると報道したため、アムステルダム市民は終戦を祝い、解放軍を歓迎するためにダム広場に集まりました。5月7日正午過ぎ、イギリス陸軍の偵察部隊がダム広場に接近した際、ドイツ軍の車列と遭遇。イギリス軍は状況が緊迫していると判断し、抵抗運動組織による主要拠点の占領が完了するまで市街地から離れることを決定しました。

銃撃事件の発生

ダム広場で市民が解放を祝い始めた頃、広場近くの建物にいたドイツ海軍兵士が、地元勢力によって逮捕されたドイツ兵が発砲したことをきっかけに、広場の群衆に向けて銃撃を開始しました。群衆は混乱の中、近くの通りへと逃げ惑い、街灯や手回しオルガン、小型トラックなどに身を隠そうとしました。

最初の銃撃の後、ドイツ軍と抵抗運動組織の間で銃撃戦が始まり、約2時間にわたって続きました。スカウト団員や赤十字職員、看護師らが負傷者の救命活動を行いました。一部の情報によると、地元勢力の指揮官がドイツ将校を説得し、ドイツ兵に銃撃を中止させたとも、あるいは、地元勢力が建物へのバズーカ攻撃をほのめかしたことで銃撃が止んだともされています。グローテ・クラブに立てこもったドイツ兵は、カナダ軍の到着後に逮捕され、ドイツ本国へ送還されました。

同日、アムステルダム中央駅でも銃撃戦が発生し、オランダ兵2名と複数のドイツ兵が死亡しました。

事件後

翌5月8日、カナダ軍がアムステルダムに入り、5月9日には数万人の人々がダム広場に集まり、解放を祝いました。ペーター・シュールド・ヘルブランディー首相らも演説を行いました。

事件の完全な捜査は行われず、当初、地元紙は死者数を19～22人と報道しましたが、犠牲者の一覧は掲載されませんでした。しかし、犠牲者の追悼団体によって、ドイツ兵を除く32人が事件で死亡したことが特定されました。そのうち26人が即死、5人が銃撃が原因で後に死亡しています。実際の死者数はさらに多い可能性があり、負傷者は100～120人とされています。

追悼

事件から2年後、グローテ・クラブの建物に追悼のための銘板が設置されました。2015年から2016年にかけて、犠牲者の名前を刻んだ仮想石がウェブサイト上に設置され、2016年には本物の石としてダム広場の歩道に埋め込まれました。2016年5月7日には、記念碑の除幕式が行われ、犠牲者たちの魂を慰めました。

事件終結に貢献した地元勢力の指揮官は、後に勲章を授与されましたが、横領の罪で有罪判決を受け、その勲章は取り消されました。


このダム広場銃撃事件は、終戦間近の混乱の中で起きた悲劇として、今もなお人々の記憶に刻まれています。解放を祝うはずだった場所が、無辜の市民を襲った悲劇の舞台となったこの事件を、私たちは決して忘れてはなりません。

関連項目

狂気の火曜日
1945年5月13日のドイツ脱走兵の処刑

外部リンク

Video footage of the events
Gaia Rietveld, "Remembering Disaster. On the shooting on Dam Square May 7th 1945", Rampsporen

もう一度検索