1951年のロードレース世界選手権

1951年FIMロードレース世界選手権：ノートンの全盛と悲劇の影

1951年のFIMロードレース世界選手権は、第3回大会として、スペインのモンジュイックサーキットで4月に開幕を迎えました。イタリアのモンツァサーキットでの最終戦まで、全8戦に渡る激戦が繰り広げられました。このシーズンは、新たにスペインGPとフランスGPがカレンダーに加わり、350ccクラスと500ccクラスは全8戦で争われました。そして、この年からマン島TTレースに125ccクラス（ウルトラライトクラス）が追加され、全クラスのレースがマン島で開催されるようになった点が大きな変化でした。

ノートン・マンクスの圧倒的強さ

前年デビューしたノートン・マンクスは、この年、その真価を発揮しました。ジェフ・デュークをライダーに迎え、500ccクラスと350ccクラスの両クラスを席巻しました。マンクスの革新的な設計、テレスコピックフロントサスペンション、油圧ダンパー付きリアスイングアーム、そして前輪荷重を重視したエンジン搭載位置などは、後のロードレースマシンの標準設計となる重要な要素でした。これらの技術的優位性が、ノートン・マンクスの圧倒的なパフォーマンスを支えていました。

各クラスの戦いと悲劇

500ccクラスでは、ノートンに対抗すべく、ジレラがテレスコピックフロントフォークとリアスイングアームを採用した4気筒マシンを投入し、前年チャンピオンのウンベルト・マセッティを起用しました。しかし、ノートン・マンクスとデュークのコンビには敵わず、デュークはアルスターGPで4勝目を挙げるなど圧倒的な強さで、最終戦を待たずにタイトルを決定づけました。さらに、デュークは同日の350ccクラスでも優勝を果たし、史上初のダブルタイトルを獲得するという偉業を達成しました。一方、開幕戦のスペインGPでは、ファーガス・アンダーソンがモト・グッツィで500ccクラス初優勝を飾りました。また、最終戦のイタリアGPでは、ジレラとイタリア勢が表彰台を独占し、意地を見せました。

350ccクラスでも、ノートン・マンクスとデュークのコンビがその強さを発揮し、5勝を挙げてタイトルを獲得しました。このクラスでは、MVアグスタのライダーであるレスリー・グラハムがベロセットのマシンに乗り、スイスGPで1勝を挙げました。これはベロセットにとって、グランプリにおける最後の勝利となりました。

250ccクラスは、悲劇的な事故が相次いだシーズンとなりました。前年チャンピオンのベネリのダリオ・アンブロジーニがフランスGPの予選中にクラッシュし、死亡しました。この事故を受け、ベネリはシーズン途中でグランプリから撤退を余儀なくされました。その後、モト・グッツィが台頭しましたが、今度はモト・グッツィのファクトリーライダーであるジャンニ・レオーニとサンテ・ジェミニアーニがアルスターGPの練習中に衝突し、2人とも命を落とすという痛ましい事故が発生しました。こうした悲劇の中、2勝を挙げたモト・グッツィのブルーノ・ルフォがチャンピオンに輝きました。これはルフォにとって、1949年に続く2度目の250ccクラス優勝であり、合わせて3度目の世界タイトル獲得となりました。

125ccクラスも、開幕戦で優勝したモンディアルのグイド・レオーニが、1ヶ月後のイタリア選手権で事故死するという衝撃的な出来事がありました。その後、マン島TTで優勝したクロミー・マッキャンドレスは、イギリス人として初めて125ccクラスで優勝を果たしました。しかし、アルスターGPでの優勝は、出走者数の不足により選手権ポイント対象外となりました。さらに、このクラスでもジャンニ・レオーニがアルスターGP250ccクラスの事故で亡くなり、ポイントリーダーを失うという事態が発生しました。最終的に、最終戦イタリアGPで優勝したカルロ・ウビアリがチャンピオンに輝きました。

1951年シーズンは、ノートン・マンクスの圧倒的な強さと、幾つかの悲劇的な事故が印象に残るシーズンとなりました。技術革新と、ライダーたちの勇敢さと才能、そしてサーキットの危険性を改めて認識させられる、ドラマチックなシーズンであったと言えるでしょう。

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