1953年のテレビ (日本)

第二次世界大戦終結から8年を経た1953年は、日本におけるテレビジョン放送が本格的に幕を開けた記念すべき年です。

本放送の開始と初期のテレビ

戦後の1950年にNHK放送技術研究所が開設した東京テレビジョン実験局での実験放送を経て、3年弱後のこの年、ついに本放送が開始されます。

まず、2月1日午後2時には、日本放送協会（NHK）が東京でテレビの本放送を始めました。当時の放送時間は1日に約4時間程度に限られており、テレビカメラもわずか5台と機材は限られていました。ニュースや映画など一部を除き、ほとんどの番組が生放送で制作・放送されていました。

NHKは開局記念特番として、菊五郎劇団による舞台劇『道行初音旅』を中継。その後、『NHKテレビニュース』や、第34代アメリカ合衆国大統領ドワイト・D・アイゼンハワーの就任式実況フィルムなど、初期の番組が放送されました。この開局を機に、一部の番組ではテレビとラジオの同時放送も始まりました。

2月2日からは、学校向けの定時番組がスタート。2月4日には初のテレビドラマ『山路の笛』が、2月6日からは初の劇映画放送となる『山びこ学校』が放送されるなど、様々なジャンルの番組制作が試みられました。

2月20日には、連続人形劇『玉藻前』や、初のクイズ・ゲーム番組『ジェスチャー』が放送開始。『ジェスチャー』は柳家金語楼と水の江滝子がチームキャプテンを務め、人気番組となっていきます。

民放の誕生と街頭テレビ

8月28日午前11時20分には、日本で初めての民間放送テレビ局となる日本テレビ放送網が開局しました。日本テレビは開局に先立ち、関東地方各地に街頭テレビを設置。特にプロ野球の巨人戦、大相撲、プロレスといったスポーツ中継は、まだ一般家庭にテレビ受像機が少なかった時代に多くの人々が群がって観戦し、テレビ普及のきっかけの一つとなりました。

日本テレビの開局は、テレビコマーシャルの始まりでもありました。初のテレビCMは、精工舎（現在のセイコーホールディングス）が提供した正午と夜7時の時報CMでした。

民放初のドラマは8月31日放送の『私は約束を守った』。9月4日には民放初の連続ドラマ『パック町を行く』が、9月5日には民放初のバラエティ番組『ほろにがショー 何でもやりまショー』が放送されるなど、NHKとは異なる番組作りが進められました。

技術の進歩と多様化する番組

この年は技術面でも重要な進歩が見られました。1月にはNHK自営の東京-名古屋-大阪間に初のテレビ下り中継マイクロ波回線が開通し、8月には上り回線も開通。これにより、地域を結ぶテレビ中継が可能となりました。

4月には、NHK放送技術研究所と東芝が共同で、世界初の全進行波管式テレビ中継機を完成させ、実用化。7月には、古いバスを改造した初のテレビ中継車（テレビカー）が三越劇場からの『名人会』中継で使用されました。

10月27日には、帝国劇場からの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』中継で、スーパーインポーズ字幕が初めて使用されるなど、演出技術も進化しました。

番組ジャンルも拡がります。NHKは5月に大相撲中継を開始したのを皮切りに、6月には初の水泳中継、8月にはプロ野球中継、9月にはラグビー中継、11月には陸上競技やサッカーの中継を行うなど、スポーツ放送を積極的に展開しました。また、4月にはテレビ初の選挙開票速報を実施しました。

年末の恒例行事と未来への一歩

12月31日には、NHKが第4回NHK紅白歌合戦をテレビで初中継。これが以後、大晦日の国民的行事として定着していきます。また、『除夜の鐘』もテレビで初めて放送されました。

国際的な動きとしては、この年にアメリカでカラーテレビの標準方式としてNTSC方式が決定。NHK技術研究所は12月からその研究を開始し、日本のカラーテレビ放送に向けた第一歩を踏み出しました。

1953年は、日本のテレビ放送が本格的に始まり、NHKと日本テレビという二つの柱が誕生し、初期の番組、技術、インフラの基礎が築かれた、まさに「テレビ元年」と呼ぶにふさわしい一年でした。この年の出来事が、その後の日本のテレビ文化の発展へと繋がっていきます。

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