1959年朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議補欠選挙

1959年朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議補欠選挙について

1959年7月19日に行われた朝鮮民主主義人民共和国（通称：北朝鮮）の最高人民会議補欠選挙は、国内の政治状況が影響を及ぼした特異な選挙である。この選挙は、朝鮮戦争が終結した1953年以降、最高指導者の金日成への権力集中が進む中で実施されたものであり、その背景には複雑な政治的出来事があった。

補欠選挙を巡る背景

朝鮮戦争が終わった後、朝鮮労働党中央委員会委員長である金日成は、国の指導力を一手に掌握する姿勢を強め、個人崇拝が進展していった。しかし、このような権力集中に異議を唱えた金枓奉や崔昌益などの反対派は、1956年の8月宗派事件で金日成に対するクーデターを試みた結果、失敗し、次々と粛清される運命にあった。これにより、最高人民会議の56名の代議員が粛清され、議席の約4分の1が空席となったことから、補欠選挙を行う必要が生じた。

補欠選挙の実施内容

補欠選挙を実施するにあたり、朝鮮労働党中央委員会はメディアに対して厳しい報道規制を課し、有権者には粛清された代議員たちが「反人民活動」に関与していたとの情報が提供された。また、投票方式にも変更が加えられた。従来では、白と黒の二つの投票箱が用意され、黒の箱に反対票を入れる仕組みであったが、この補欠選挙では白の投票箱のみが設置され、候補者の氏名に線を引くことで反対票を示すスタイルに変更された。この変更により、反対票を投じた有権者が特定されやすくなった。

選挙結果とその影響

補欠選挙は56の選挙区で行われ、結果的に55選挙区で朝鮮労働党の候補者が当選。残る1選挙区では天道教青友党の党首である朴申徳が当選した。この選挙では、全体で120万票が投じられ、その中でわずか14票、すなわち0.001%が反対票であった。実際、この選挙を境に、北朝鮮の選挙史において反対票が存在しない状況が続くことになる。

この補欠選挙は、北朝鮮の政治における選挙の形態と国民の意見表明を抑制する仕組みを象徴している。その背景には、権力者に対する徹底した個人崇拝と、政治的なライバルを排除する厳しい手法があるといえる。例として、この時の選挙結果は明白に金日成体制の強化を示すものであり、有権者は命令に従った選挙行動を余儀なくされていた。

補欠選挙の結果は、北朝鮮の政治構造を理解する上で重要な手掛かりとなり、その後の選挙プロセスにも影響を及ぼしている。

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