1961年の航空

1961年は、航空史において重要な出来事が数多く発生した年でした。冷戦下の緊張が続く中、航空技術は目覚ましい進歩を遂げ、同時に多くの危険も孕んでいた時代でもありました。

核兵器の脅威と宇宙開発競争

1月24日、アメリカ空軍のB-52爆撃機が、ノースカロライナ州上空で空中分解するという衝撃的な事故が発生しました。この事故で、搭載していた2発の核爆弾が地表に落下しました。幸いにも爆発には至りませんでしたが、1発は起爆寸前の状態であり、核兵器の危険性を改めて世界に認識させました。一方、宇宙開発競争は激化し、1月31日にはマーキュリー計画でチンパンジーのHAMが弾道飛行を成功させ、4月12日にはソ連のユーリイ・ガガーリンが人類初の有人軌道飛行を達成しました。この偉業は、宇宙開発競争におけるソ連の優位を示すものであり、世界に大きな衝撃を与えました。

航空技術の進歩

1961年は、航空技術の進歩が顕著に表れた年でもあります。2月1日には、アメリカが固体燃料を用いる大陸間弾道弾ミニットマンの発射に成功。3月30日には、実験機X-15が時速4,265kmの速度記録を樹立し、7月10日にはアレクサンドル・フェドトフが実験機E-166で時速2401kmの速度記録を達成しました。11月21日には、ロバート・B・ロビンソンがF4H-1F ファントム II で時速2,585.4kmの速度記録を樹立するなど、速度記録が相次ぎました。また、5月2日にはスイスのピラタスPC-6、8月17日には超音速旅客機の低速飛行特性を検証するためのハンドレページHP.115、そして9月21日には大型輸送ヘリコプターCH-47チヌークが初飛行するなど、様々なタイプの新型機が誕生しました。

事故と国際関係

5月4日には、マルコム・ロスとビクター・A・プレーサーが耐圧服の試験中に気球で高度34,670mに到達しましたが、プレーサーは回収時に事故死するという悲劇も起こりました。9月14日には、西ドイツ空軍の戦闘爆撃機が航法ミスで東ドイツ領空を侵犯し、ベルリン・テーゲル空港に着陸するという事件が発生しました。これによりソ連は領空侵犯機は撃墜すると宣言し、東西間の緊張がさらに高まりました。

その他の出来事

その他、3月1日にイタリア空軍の曲技飛行隊フレッチェ・トリコローリが創設され、3月28日には旧フランス領の諸国によりエール・アフリックが設立されました。また、6月1日にはユナイテッド航空がキャピタル航空を吸収し、西側最大の航空会社となりました。6月21日から22日にかけては、イギリス空軍のアブロ バルカンが初のイギリスからオーストラリアへの無着陸飛行を達成しました。これらの出来事は、1961年が航空業界において大きな変革の年であったことを示しています。

受賞者

航空分野での功績を讃える賞も多く授与され、ハーモン・トロフィーはウィリアム・ペイン、ジャクリーン・コクラン、マルコム・ロス、ヴィクター・プレイサーに、デラボー賞はアレクサンドル・フェドトフ、ユーリイ・ガガーリン、ゲルマン・チトフ、アラン・シェパード、ゲオルギー・モソロフ、ロバート・B・ロビンソンに贈られました。


1961年は、航空技術の進歩が加速し、多くの記録が塗り替えられた一方で、核兵器の脅威や冷戦による緊張も高まった年でした。この年の出来事は、その後の航空史や国際関係に大きな影響を与えました。

もう一度検索