1962年ドイツグランプリ

1962年ドイツグランプリ：悪天候が演出したドラマチックなレース

1962年8月5日、ドイツのニュルブルクリンクサーキット。F1世界選手権第6戦、1962年ドイツグランプリが開催されました。このレースは、悪天候と数々のドラマによって、記憶に残る一戦となりました。

豪雨と泥濘の戦場

レース開始時刻は、降り続く大雨による水と泥の流入で1時間以上遅延されました。路面は完全に乾くことなく、終始ウエットコンディションでのレース展開となりました。この過酷な状況下で、各ドライバーのドライビングスキルが試されることになります。

グラハム・ヒルの勝利と上位陣の混戦

予選2位からスタートしたBRMのグラハム・ヒルが、ウエット路面を巧みにコントロールし、見事優勝を飾りました。2位にはローラを駆るジョン・サーティース、3位にはポルシェのダン・ガーニーが入賞。注目すべきは、上位6台全てが異なるコンストラクターのマシンだったことです。この結果は、当時のF1におけるコンストラクター間の技術力の多様性を示すものと言えるでしょう。サーティースは、この年最後の入賞となりましたが、このレースでの好成績によりドライバーズランキング3位につけました。ガーニーは、優れたドライビングテクニックでフィル・ヒルをかわし、3位入賞を果たしました。

フェラーリの苦戦と新技術の投入

前戦イギリスGPで好成績を残したフェラーリでしたが、このレースでは苦戦を強いられました。フィル・ヒルはオイルでバイザーが汚れたためピットインを余儀なくされ、ピットアウト直後にリアサスペンションが故障しリタイア。チームメイトのリカルド・ロドリゲスは改良型のエンジンを搭載したマシンで6位入賞と健闘しましたが、ジャンカルロ・バゲッティは10位に終わりました。また、最新の技術を投入した開発カーを走らせたロレンツォ・バンディーニは、3周目にリタイアという結果に終わりました。フェラーリは、労働争議の影響もあり、フランスGPを欠場、イギリスGPもフィル・ヒル1台のみの出場と苦しい状況が続いていた中で、複数台の新型マシンを投入したものの、思うような結果は得られませんでした。

その他のドライバーたちの戦い

ジム・クラークは、スタート直後に燃料ポンプのトラブルに見舞われ、最後尾から追い上げる展開となりました。猛烈な追い上げを見せ、4位入賞を果たしましたが、レース中盤の数回のクラッシュを避けるため、ペースを落とす場面もありました。クーパーのマシンで5位に入賞したブルース・マクラーレンは、クライマックスFWMVエンジンを搭載したT60を使用。チームメイトのトニー・マグスは、予選中のアクシデントにより古いマシンを使用せざるを得ず、9位に終わりました。この予選中のアクシデントは、ドイツのテレビ局のカメラがコース上に落下したことが原因でした。この事故は、安全上の問題を改めて浮き彫りにしました。

新車のデビューとリタイア

このレースには、3台の新車がデビューしました。BRMの新エンジンを搭載したマシンは、ギアボックストラブルでリタイア。マセラティエンジンを搭載したENBは最下位で完走を果たしました。そして、ジャック・ブラバムが創設したブラバムチームの初陣となったBT3は、練習走行中のトラブルにより後方グリッドからのスタートを強いられ、9周目にスロットル故障でリタイアという結果となりました。しかし、ブラバム自身はマシンの性能に手応えを感じていたようです。

様々な出来事が絡み合ったレース

悪天候、マシントラブル、アクシデントなど、様々な要素が絡み合った1962年ドイツグランプリ。優勝したグラハム・ヒルはもちろん、各ドライバーの奮闘、そして新車のデビューなど、このレースには多くの見どころがありました。このレースは、F1の歴史において重要な一戦として記憶されています。

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