1962年フランスグランプリ

1962年フランスグランプリ：ポルシェとガーニーの奇跡の勝利

1962年7月8日、フランスのルーアン・レゼサール・サーキット。1962年のF1世界選手権第4戦、フランスグランプリが開催されました。このレースは、予期せぬ展開とドラマチックな結末によって、F1の歴史に深く刻まれることになります。

まず大きな出来事として、イタリアでの労働争議の影響で、強豪フェラーリがレースを欠場しました。当時ドライバーズランキング2位につけていたフィル・ヒルは、スタンドからレースを見守るしかありませんでした。一方、前戦ベルギーGPを欠場していたポルシェが、このレースから復帰を果たします。

レース序盤は、グラハム・ヒルがリードを奪い、ポールポジションのジム・クラークはジョン・サーティース、ブルース・マクラーレンらと激しい2位争いを展開。ジャック・ブラバムとダン・ガーニーがその後を追いかける展開となりました。しかし、レースは予想外の展開を迎えます。マクラーレンはギアトラブルでコースアウト、ブラバムはリアサスペンションの故障でリタイアを余儀なくされます。サーティースもイグニッショントラブルに見舞われ、順位を大きく落としました。

グラハム・ヒルは、クラークに対し22秒もの差をつけて快調に走り続けました。しかし、30周目、ジャッキー・ルイスとの接触によって、クラークがトップに浮上。しかし、グラハム・ヒルは32周目にファステストラップを記録し、続く33周目にはクラークを抜き返すことに成功しました。ところが、クラークは次の周にフロントサスペンションを破損しリタイア。再び単独首位に立ったグラハム・ヒルでしたが、42周目、インジェクションとスロットルリンケージのトラブルに見舞われ、ヘアピンカーブでストップしてしまいます。

このアクシデントにより、首位に躍り出たのはダン・ガーニーでした。ガーニーはそのままトップを譲ることなくチェッカーフラッグを受け、見事優勝。彼自身にとっても、そしてポルシェにとっても、F1初勝利という歴史的な瞬間となりました。この勝利は、ポルシェにとってF1における唯一の優勝、そして空冷エンジンを搭載したマシンによる唯一の優勝という、特別な意味を持つものとなりました。

ドイツのコンストラクターがF1で勝利したのは、1955年イタリアGPでメルセデスのファン・マヌエル・ファンジオが優勝して以来のこと。実に7年ぶりの快挙でした。この勝利から、次のドイツコンストラクターの勝利である2008年カナダGP（BMWザウバー、ロバート・クビサ）まで、46年間もの歳月が流れます。

2位には、クーパー・クライマックスV8エンジン搭載車を駆るトニー・マグスが入り、序盤で大きく出遅れながらも3位に食い込んだリッチー・ギンサーと共に表彰台を飾りました。一方、グラハム・ヒルの脱落後2位に浮上していたサーティースは、マシントラブルが相次ぎ、最終的に5位に終わるという悔しい結果となりました。

この1962年フランスグランプリは、フェラーリの欠場、トップ争いの激しい展開、そして予想だにしなかったポルシェの初優勝と、多くのドラマが詰まった、忘れがたいレースとしてF1の歴史に刻まれました。

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