1967年の日本の女性史
1967年（昭和42年）は、日本の女性史において様々な出来事が起こった年でした。政治、経済、社会、教育、そして日常生活に至るまで、女性を取り巻く環境は変化の兆しを見せていました。
年の始まり、1月の衆議院議員総選挙では、7名の女性候補者が当選を果たしました。この選挙での女性の投票率は73.28%で、男性の74.75%に迫るものでした。また、大阪高等裁判所では、時間外労働に関する労使協約を無視して女性に労働させた場合、労働基準法内の時間であっても違法とする判決が出されました。これは、女性の労働条件保護に向けた重要な判断と言えます。
社会運動も活発でした。2月には、ベトナム戦争に反対するグループが、アメリカの母や妻への平和を願うカードを送る運動を開始しました。主婦連合会は牛乳の値上げに反対し、公正取引委員会へ提訴するなど、消費者運動の先頭に立ちました。漂白パンに使用される添加物の追放運動も推進しています。また、この頃、出稼ぎ労働者の増加に伴い、留守家族である女性たちが地域の安全を守るための活動（自衛消防隊など）を行う動きも見られました。
3月8日の国際婦人デーには、「世界の婦人と手をつなぎ、平和と独立・婦人の解放をかちとろう」をスローガンに掲げた中央集会が開催され、各地でも記念集会が行われました。また、内職労働者の待遇改善を求める大会も開かれ、最低工賃の引き上げなどが要求されました。政府は「経済社会発展計画」の中で、女性の能力活用のため社会教育の強化や勤労女性の職場環境整備、保育所の増設などを施策として掲げました。
教育分野では、繊維工場で働く女性のために、勤務体制に合わせた学科を設ける短期大学が現れました。また、かつての沖縄戦で犠牲となったひめゆり部隊などの女子学生88名に勲章が授与されています。
4月に入ると、厚生省は0歳児保育の拡充を含む保育所緊急整備計画をスタートさせました。統一地方選挙では女性当選者が30名となり、都知事選挙では女性の投票率が男性を上回るという現象も見られました。一方で、幼女の事故死賠償訴訟で、女性は結婚後無収入になるという理由で賠償額が差し引かれる判決が出され、「内助の功はタダなのか」と批判を呼びました。この判決は、家事労働の経済的評価に関する議論のきっかけの一つとなりました。
労働に関する国際的な動きとして、7月には同一価値労働同一賃金を定めたILO第100号条約が国会で承認されました。また、炭鉱の一酸化炭素中毒症に関する特別措置法を求める主婦たちの座り込みやハンガー・ストライキが行われ、法公布へとつながりました。
スポーツや社会活動の分野でも女性の活躍が見られました。7月には、今井通子、若山美子が女性として初めてマッターホルン北壁の登頂に成功。地域の女性たちは、自衛隊適格者名簿の公開を求めたり、演習場の返還を要求して座り込みを行ったりしました。全国的な母親大会も盛況で、無認可保育所の全国交流会も開催されました。米価値上げ反対運動では、多くの婦人団体が座り込みや要望書の提出を行いました。
職業選択の多様化に対応するため、9月には有能婦人センターやパートタイマー向けの職業紹介センターが開設されました。独身女性の連盟も結成され、後に女性の生き方を記念する碑を建立しています。労働組合の中では、金融業界の女性タイピストなどを中心とした職業病に関する交流会が始まり、以後毎年開催されることとなります。また、名古屋放送労働組合では、女性の30歳定年制撤廃を求めるストライキが行われました。
法的な判断では、結婚を理由とした女性の解雇を違法とする判決（豊国産業事件）が神戸地方裁判所から出されました。また、パートタイマーの解雇に関しても、東京地方裁判所が不当解雇を認めない判決（春風堂事件）を下すなど、女性の雇用安定に向けた動きが見られました。
国際的な動きとして特筆すべきは、11月に国連総会で「婦人に対する差別撤廃宣言」が採択されたことです。国内では、この宣言を記念する集会も開かれました。一方で、警視庁がミニスカートの流行と性犯罪を結びつけるような警告を発するなど、女性の服装や社会進出に対する保守的な見方もありました。
この年、日本の女子雇用者数は1000万人を超え、特に中高年齢層の増加が顕著でした。国民経済白書では、働く母親の増加に伴う保育所不足や、農村部での農業従事者の女性化による過重労働などが問題点として指摘されています。義務教育を終えた子供を持つ母親の43%が就労しており、その主な理由は経済的なものでした。また、イギリスで人工流産法が成立し、中絶の自由化への議論が始まったことも、女性の身体に関わる国際的な動向として注目されました。
1967年は、女性たちが社会の様々な分野で声を上げ、権利や環境の改善を求め、自らの生き方を選択しようとする動きが多方面で顕在化した一年と言えるでしょう。
（参考：日本の女性史年表）
年の始まり、1月の衆議院議員総選挙では、7名の女性候補者が当選を果たしました。この選挙での女性の投票率は73.28%で、男性の74.75%に迫るものでした。また、大阪高等裁判所では、時間外労働に関する労使協約を無視して女性に労働させた場合、労働基準法内の時間であっても違法とする判決が出されました。これは、女性の労働条件保護に向けた重要な判断と言えます。
社会運動も活発でした。2月には、ベトナム戦争に反対するグループが、アメリカの母や妻への平和を願うカードを送る運動を開始しました。主婦連合会は牛乳の値上げに反対し、公正取引委員会へ提訴するなど、消費者運動の先頭に立ちました。漂白パンに使用される添加物の追放運動も推進しています。また、この頃、出稼ぎ労働者の増加に伴い、留守家族である女性たちが地域の安全を守るための活動（自衛消防隊など）を行う動きも見られました。
3月8日の国際婦人デーには、「世界の婦人と手をつなぎ、平和と独立・婦人の解放をかちとろう」をスローガンに掲げた中央集会が開催され、各地でも記念集会が行われました。また、内職労働者の待遇改善を求める大会も開かれ、最低工賃の引き上げなどが要求されました。政府は「経済社会発展計画」の中で、女性の能力活用のため社会教育の強化や勤労女性の職場環境整備、保育所の増設などを施策として掲げました。
教育分野では、繊維工場で働く女性のために、勤務体制に合わせた学科を設ける短期大学が現れました。また、かつての沖縄戦で犠牲となったひめゆり部隊などの女子学生88名に勲章が授与されています。
4月に入ると、厚生省は0歳児保育の拡充を含む保育所緊急整備計画をスタートさせました。統一地方選挙では女性当選者が30名となり、都知事選挙では女性の投票率が男性を上回るという現象も見られました。一方で、幼女の事故死賠償訴訟で、女性は結婚後無収入になるという理由で賠償額が差し引かれる判決が出され、「内助の功はタダなのか」と批判を呼びました。この判決は、家事労働の経済的評価に関する議論のきっかけの一つとなりました。
労働に関する国際的な動きとして、7月には同一価値労働同一賃金を定めたILO第100号条約が国会で承認されました。また、炭鉱の一酸化炭素中毒症に関する特別措置法を求める主婦たちの座り込みやハンガー・ストライキが行われ、法公布へとつながりました。
スポーツや社会活動の分野でも女性の活躍が見られました。7月には、今井通子、若山美子が女性として初めてマッターホルン北壁の登頂に成功。地域の女性たちは、自衛隊適格者名簿の公開を求めたり、演習場の返還を要求して座り込みを行ったりしました。全国的な母親大会も盛況で、無認可保育所の全国交流会も開催されました。米価値上げ反対運動では、多くの婦人団体が座り込みや要望書の提出を行いました。
職業選択の多様化に対応するため、9月には有能婦人センターやパートタイマー向けの職業紹介センターが開設されました。独身女性の連盟も結成され、後に女性の生き方を記念する碑を建立しています。労働組合の中では、金融業界の女性タイピストなどを中心とした職業病に関する交流会が始まり、以後毎年開催されることとなります。また、名古屋放送労働組合では、女性の30歳定年制撤廃を求めるストライキが行われました。
法的な判断では、結婚を理由とした女性の解雇を違法とする判決（豊国産業事件）が神戸地方裁判所から出されました。また、パートタイマーの解雇に関しても、東京地方裁判所が不当解雇を認めない判決（春風堂事件）を下すなど、女性の雇用安定に向けた動きが見られました。
国際的な動きとして特筆すべきは、11月に国連総会で「婦人に対する差別撤廃宣言」が採択されたことです。国内では、この宣言を記念する集会も開かれました。一方で、警視庁がミニスカートの流行と性犯罪を結びつけるような警告を発するなど、女性の服装や社会進出に対する保守的な見方もありました。
この年、日本の女子雇用者数は1000万人を超え、特に中高年齢層の増加が顕著でした。国民経済白書では、働く母親の増加に伴う保育所不足や、農村部での農業従事者の女性化による過重労働などが問題点として指摘されています。義務教育を終えた子供を持つ母親の43%が就労しており、その主な理由は経済的なものでした。また、イギリスで人工流産法が成立し、中絶の自由化への議論が始まったことも、女性の身体に関わる国際的な動向として注目されました。
1967年は、女性たちが社会の様々な分野で声を上げ、権利や環境の改善を求め、自らの生き方を選択しようとする動きが多方面で顕在化した一年と言えるでしょう。
（参考：日本の女性史年表）
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