1967年ベルギーグランプリ

1967年6月18日、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキット。F1世界選手権第4戦、1967年ベルギーグランプリが開催されました。このレースは、アメリカ車によるF1初勝利、そしてアメリカ人ドライバーによるアメリカ車でのF1初勝利という歴史的瞬間を生み出すことになります。

ポールポジションを獲得したのはジム・クラークでした。彼は序盤、後続のジャッキー・スチュワートとダン・ガーニーに20秒以上の差をつける圧倒的な速さでレースをリードしました。しかし、11周目にプラグ交換のためにピットインを余儀なくされ、順位を落とします。

この隙を突いたスチュワートがトップに立ちますが、彼のBRMはギアシフトにトラブルを抱えていました。一方、ガーニーは燃圧の問題で一時的に後退したものの、その後驚異的な追い上げを見せます。ファステストラップを記録し、残り8周でスチュワートをオーバーテイク。ついにトップに躍り出ました。

ガーニーが駆るイーグルT1Gは、軽量で高度な空力設計を施され、400bhp弱のウェスレイクV12エンジンを搭載。その圧倒的なパフォーマンスは、平均時速234.946km/hという驚異的な記録を樹立し、1959年のドイツGPにおけるトニー・ブルックスの記録を8年ぶりに更新しました。バックストレートでは315km/hに達するなど、その速さは観衆を魅了しました。そして、この革新的なマシンでガーニーは、インディ500を除けばアメリカで製造されたF1マシンによる唯一の優勝、アメリカ国籍のコンストラクターによる初めての優勝という歴史的偉業を達成しました。チームオーナー兼ドライバーとして優勝した唯一のアメリカ人でもあるのです。

しかし、このレースはガーニーの快挙だけでなく、悲劇的な事故も発生しました。1周目にマイク・パークスがコースアウトし、大怪我を負ってしまったのです。スチュワートのマシンから漏れた潤滑油が原因でした。パークスは両足を複雑骨折し、一時は切断も検討されるほどの重傷を負いました。意識不明の重体となりましたが、一命は取りとめたものの、F1ドライバーとしてのキャリアを終えることとなりました。

この事故は、パークスのチームメイトであるルドビコ・スカルフィオッティにも大きなショックを与えました。スカルフィオッティは、親友であるパークスの事故に心を痛め、戦意喪失。このレースを最後にF1から引退することを決意します。一方、同じチームメイトのクリス・エイモンは、この悲劇的な状況の中でも最後までペドロ・ロドリゲスのクーパーと激しくバトルを繰り広げ、3位表彰台を獲得しました。

このレースでは、ホンダのジョン・サーティースも苦戦を強いられました。予選から燃料系のトラブルに見舞われ、決勝では1周目でピストンが破損しリタイアという結果に終わりました。

1967年ベルギーグランプリは、ガーニーの栄光とパークスの悲劇、そしてドライバーたちのドラマが凝縮された、記憶に残るレースとなりました。このレースの結果、F1の世界にアメリカの存在感を示すことになったのです。

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