1968年メキシコグランプリ

1968年メキシコグランプリ：チャンピオン争いの激闘とドラマ

1968年のF1世界選手権最終戦、メキシコグランプリは、1968年11月3日、メキシコのマグダレナ・ミクスカで開催されました。このレースは、グラハム・ヒル（ロータス）、ジャッキー・スチュワート（マトラ）、そして前年度王者のデニス・ハルム（マクラーレン）によるドライバーズチャンピオン争いの決着戦として、大きな注目を集めていました。当時、ポイントシステムは6位までが入賞で、1位から順に9、6、4、3、2、1ポイントが与えられ、同点の場合は上位入賞回数の多いドライバーが上位となるルールでした。

ヒルとスチュワートは優勝すればチャンピオンを獲得できる絶対的な立場にありましたが、2位以下では他のドライバーの結果次第でタイトルが決まる状況でした。ハルムは優勝以外ではチャンピオン獲得の可能性がない、厳しい立場にありました。

それぞれのドライバーのポイント状況は以下の通りです。

グラハム・ヒル (39点): 優勝2回、2位3回、4位1回。優勝すればチャンピオン、2位以下でもスチュワートやハルムの結果次第で優勝の可能性がありました。
ジャッキー・スチュワート (36点): 優勝3回、3位1回、4位1回、6位2回。優勝すればチャンピオン、2位以下でもヒルとハルムの結果次第で優勝の可能性がありました。
* デニス・ハルム (33点): 優勝2回、2位1回、4位1回、5位3回。優勝以外ではチャンピオン獲得の可能性がない状況でした。


レースは、10月27日に閉幕したメキシコシティオリンピックの日程を考慮し、その一週間後に開催されました。ロータスは地元出身のモイセス・ソラーナをスポット参戦させ、フェラーリはカナダGPで負傷したジャッキー・イクスが復帰しましたが、脚を固定した状態での参加となりました。

予選では、ジョー・シフェール（ロータス）がポールポジションを獲得し、クリス・エイモンと共にフロントローを占めました。チャンピオン候補のヒルとハルムは2列目、スチュワートは4列目からのスタートとなりました。予選2日目には、ヨアキム・ボニエがマシントラブルによりホンダのスペアカーを借りてレースに参加するというアクシデントもありました。

決勝レースは、序盤から順位が大きく変動する展開となりました。サーティースが一時的にトップに立つ場面もありましたが、ヒルが首位を奪還し、その後スチュワートが3位に浮上しました。レース中盤には、サーティースのマシントラブル、リントとイクスのリタイア、そして、チャンピオン争いに絡むハルムがマシントラブルでリタイアするなど、次々とアクシデントが発生しました。

ハルムのリタイアにより、チャンピオン争いはヒルとスチュワートの一騎打ちとなりました。その後もシフェールのリード、スチュワートのマシントラブルなど、最後まで順位はめまぐるしく変化しました。しかし、最終的にヒルがトップでチェッカーを受け、1962年以来2度目のドライバーズチャンピオンを獲得しました。 3位にはジャッキー・オリバーが入賞し自身初の表彰台を獲得しました。ロータスはコンストラクターズチャンピオンも獲得しました。ホンダはボニエの5位入賞によりコンストラクターズポイントを獲得しましたが、シーズン全体としては期待を下回る結果となりました。

レース後、ホンダはF1活動を一時休止しました。これは、市販車開発の優先という経営判断によるものでした。また、クーパーもこの年をもってF1から撤退しました。

この1968年メキシコグランプリは、チャンピオン争いの激しさ、数々のアクシデント、そしてホンダやクーパーといった名門チームの撤退劇など、F1の歴史に刻まれた記憶に残る一戦となりました。

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