1970年のロードレース世界選手権

1970年ロードレース世界選手権：新時代への序章

1970年のFIMロードレース世界選手権は、西ドイツGPからスペインGPまでの全12戦で争われ、5月からの長いシーズンとなりました。前年と同様の12戦制でしたが、開幕戦と最終戦が入れ替わっており、スペインGPが最終戦としてシーズンを締めくくりました。

この年は、125ccクラスと250ccクラスに新たなレギュレーションが導入されました。2気筒以下のマシンのみの出場が認められたのです。これにより、それまでの多気筒マシンは姿を消し、日本のメーカーが市販車ベースで開発したレーサーが台頭するきっかけとなりました。特に250ccクラスでは、ヤマハのTD2が多くのプライベーターに支持され、ランキング上位を独占するなど、その性能の高さを証明しました。このTD2は、のちに伝説的なTZシリーズへとつながる重要なマシンとなるのです。

各クラスの戦いを振り返る

500ccクラスでは、ジャコモ・アゴスチーニとMVアグスタの圧倒的な強さが継続しました。アゴスチーニは全戦優勝という驚異的な成績で5連覇を達成。MVアグスタは、シーズン途中でアンジェロ・ベルガモンティを迎え入れ、アゴスチーニが欠場した最終戦でベルガモンティが初優勝を飾るという活躍を見せました。また、カワサキH1Rに乗るジンジャー・モロイもベテランの貫禄を見せ、ランキング2位を獲得しました。

350ccクラスも500ccクラスと同様の展開となり、アゴスチーニが9戦全勝で3年連続のタイトルを獲得しました。ベルガモンティは、アゴスチーニの欠場した最終戦で優勝を果たしました。

250ccクラスは、新レギュレーションの影響を最も受けたクラスです。ベネリの4気筒マシンが姿を消し、ヤマハTD2が台風の目となりました。多くのプライベーターがTD2を選び、その中からロドニー・ゴウルドがチャンピオンに輝きました。ゴウルドは、ヤマハから特別仕様のマシンを与えられ、フランスGPで初優勝を飾り、安定した走りでタイトルを獲得しました。一方、オッサのサンチャゴ・ヘレロはTD2に唯一対抗できる速さを見せましたが、マン島TTでの事故により命を落としてしまいました。この事故をきっかけに、オッサはロードレースからの撤退を余儀なくされました。最終的に、ライダーズランキングの上位10位は、ヘレロを除く全員がヤマハTD2に乗るライダーで占められました。

125ccクラスでは、スズキのディーター・ブラウンが序盤から4連勝を飾るなど活躍。後半はデルビのアンヘル・ニエトが追い上げましたが、ブラウンがタイトルを獲得しました。

50ccクラスは、デルビ、クライドラー、ヤマティなどのヨーロッパ勢による激しい争いが展開されました。タイトル争いは、ディフェンディングチャンピオンのアンヘル・ニエトとヤマティのアールト・トールセンの二人に絞られました。最終的にニエトが2連覇を達成しました。

新星たちの登場

この年は、将来のスターライダーたちがグランプリデビューを果たした年でもあります。スペインGPの125ccクラスで、バリー・シーンが印象的な2位でデビュー。後に500ccクラスのチャンピオンとなり、イギリスの国民的英雄となるライダーです。また、ヤーノ・サーリネンも250ccクラスにデビューし、ランキング4位という好成績を残しました。

まとめ

1970年シーズンは、新レギュレーション、日本の市販レーサーの台頭、そして将来を担う若手ライダーたちの活躍など、ロードレースの歴史に大きな変化をもたらした年でした。アゴスチーニの圧倒的な強さ、ヤマハTD2の成功、そして新星たちの登場は、このシーズンの大きな話題となりました。これらの出来事は、今後のロードレースの発展に大きな影響を与えたのです。

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