1970年アメリカグランプリ

1970年アメリカグランプリ: フィッティパルディの初優勝とリントの死後チャンピオン

1970年10月4日、アメリカ合衆国ニューヨーク州ワトキンズ・グレンのワトキンズ・グレン・グランプリレースコースで、F1世界選手権第12戦、1970年アメリカグランプリが開催されました。108周に渡るレースは、ドラマチックな展開と、幾多の思わぬ出来事が織りなす、記憶に残る一戦となりました。

予選: 雨に見舞われた予選では、ジャッキー・イクスが4回目のポールポジションを獲得。2番手にはジャッキー・スチュワート、3番手にはロータスの新エース、エマーソン・フィッティパルディがつけました。このレースでF1デビューを果たすレイネ・ウィセルは9番グリッドからスタートしました。

ロータスチームの変革: イタリアGPで悲劇的な事故死を遂げたヨッヘン・リントの死後、ロータスチームは大きな変化を迎えました。リントのチームメイトであったジョン・マイルズはチームを離れ、若き才能、フィッティパルディがエースドライバーに抜擢。そしてウィセルが新たなチームメイトとして加入しました。この体制転換は、リントの死後もチャンピオン獲得を目指すロータスの強い意志を示すものでした。

決勝: スタート直後、スチュワートがトップに立ち、ロドリゲスが2位につけました。序盤はスチュワートが独走態勢を築きましたが、レースは予期せぬ展開を迎えました。サーティースとオリバーがメカニカルトラブルでリタイア。その後、イクスがロドリゲスを抜き、レガツォーニもロドリゲスを追い抜きました。

レース中盤、スチュワートはイクスに大差をつけ首位を快走していましたが、イクスは燃料漏れに見舞われピットイン。チャンピオン獲得の望みは絶たれましたが、その後猛追を開始しました。一方、首位を走っていたスチュワートはオイル漏れによりリタイア。ここでロドリゲスがトップに立ちましたが、残り7周でまさかのガス欠。このアクシデントにより、フィッティパルディがトップに浮上し、そのままチェッカーを受けました。

フィッティパルディの初優勝: フィッティパルディはF1デビューからわずか4戦目での初優勝。ブラジル人ドライバーとして初のF1優勝という偉業を達成しました。2位にはロドリゲス、3位にはF1デビュー戦のウィセルが入賞し、ロータスチームにとって最高の結果となりました。イクスは4位に終わりましたが、彼の猛追は観衆を沸かせました。

チャンピオン決定: この結果により、既に他界していたヨッヘン・リントが死後チャンピオンに。ロータスもコンストラクターズチャンピオンを獲得しました。リントの死後も、彼の意志を受け継ぎ、チームメイトの活躍によって夢が叶った瞬間でした。

コースの変遷: このアメリカグランプリは、ワトキンズ・グレン・グランプリレースコースの2.35マイル（3.78キロメートル）のレイアウトが使用された最後となりました。翌年にはコースが改修され、レイアウトが変更されました。

表彰: レース主催者は、翌年の冬にGPDA（グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション）から「ベスト・オーガナイザー・レース・アワード」を受賞しました。これは、彼らのレース運営の高さを示すものでした。

1970年アメリカグランプリは、フィッティパルディの鮮烈なデビュー、リントの死後チャンピオン、そしてコースレイアウトの変更など、多くのドラマが詰まった忘れがたいレースとしてF1の歴史に刻まれました。

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