1970年モナコグランプリ

1970年モナコグランプリ：リントの劇的勝利とマクラーレンの悲劇

1970年5月10日、モナコ公国モンテカルロ市街地コースで開催されたF1世界選手権第3戦、モナコグランプリは、数々のドラマが凝縮された忘れられない一戦となりました。このレースは、ヨッヘン・リントのロータス49による最後の勝利、そしてF1界のレジェンド、ブルース・マクラーレンのF1における最後のレースとして、F1の歴史に深く刻まれています。同時に、若きロニー・ピーターソンにとってのF1デビュー戦でもありました。

レース前：新車とベテラン勢

2週間前にシルバーストンで開催された非選手権レース、インターナショナル・トロフィーでは、クリス・エイモン（マーチ）が優勝。一方、ロータスは前戦スペインGPで投入した新型マシン72ではなく、49Cを使用するという戦略を選択しました。これは、新型マシンの開発がまだ不完全であったこと、そしてチームが信頼性の高い49Cを優先したためと考えられています。また、アメリカでのレースを優先したマリオ・アンドレッティは今大会を欠場しました。

エントリーリスト：新星ピーターソンの登場

ドライバーラインナップは大きな変更はなく、注目はアンティーク・オートモビルズからマーチ701で参戦する新人、ロニー・ピーターソンでした。このレースが彼のF1デビュー戦となります。

予選：スチュワートのポールポジションと波乱の追加セッション

モナコGPでは、決勝進出は16台に制限されていました。予選は木曜と金曜、土曜の3日間行われ、木曜のセッションではジャッキー・スチュワートがトップタイムを記録しました。しかし金曜は豪雨のためタイム更新はならず、土曜のドライコンディションでスチュワートはポールポジションを獲得。フロントローにはクリス・エイモンが並びました。

決勝進出を争う追加セッションでは、シード権を得られなかったドライバーたちが激しい争いを繰り広げました。このセッションで、アンリ・ペスカロロ、ピアス・カレッジ、ブルース・マクラーレン、ジョー・シフェール、ロニー・ピーターソン、ジャッキー・オリバーが決勝進出を果たしました。一方、ジョン・セルボ＝ギャバンはマシンの損傷により決勝進出を逃し、このレースを最後にF1から引退しました。グラハム・ヒルはスタート前にマシンの交換を行ったため、最後尾からのスタートとなりました。

決勝：スチュワートからブラバムへ、そしてリントの逆転劇

決勝レースは好天に恵まれ、スタートでスチュワートがトップに立ちました。序盤はスチュワート、エイモン、ブラバム、ベルトワーズがトップを争いましたが、レース中盤以降はマシントラブルが続出します。ベルトワーズはトランスミッション故障、イクスはドライブシャフト破損によりリタイア。スチュワートはエンジントラブルによりピットインを余儀なくされ、ブラバムがトップに浮上しました。

その後、エイモンもサスペンション故障でリタイア。2位につけ、着実にペースを上げていたリントは、最終ラップ、コースアウト寸前のブラバムをかわし、劇的な逆転優勝を飾りました。このときの彼のファステストラップは、自身の予選タイムよりも2.7秒、スチュワートのポールポジションタイムよりも0.8秒速いという驚異的なものでした。2位はブラバム、3位にはペスカロロが入り、初の表彰台を獲得しました。

結び：伝説の一戦

1970年モナコグランプリは、リントの華麗なる逆転劇、マクラーレンのF1最後のレース、そしてピーターソンの華々しいデビューと、様々な要素が絡み合った伝説的な一戦となりました。このレースは、F1の歴史において、常に語り継がれるべき重要な出来事と言えるでしょう。リントの平均速度は131.716km/h、ファステストラップは彼の記録した1分23秒2でした。レースリーダーはスチュワートが27周、ブラバムが52周、リントが1周という結果でした。このレース後、F1ランキングでは、スチュワートがトップを維持しました。

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