1971年アメリカグランプリ

1971年アメリカグランプリ：セベールの初勝利と悲劇の影

1971年のF1世界選手権最終戦、アメリカグランプリは、ニューヨーク州ワトキンス・グレンのグランプリコースで10月3日に開催されました。このレースは、ティレルチームのフランソワ・セベールにとって、そしてフランス人ドライバーにとっても歴史的な瞬間となりました。

レース概要：セベールの初優勝

59周で行われたレースは、5番グリッドからスタートしたセベールが、14周目にチームメイトであるジャッキー・スチュワートをかわしてトップに立ち、そのまま逃げ切って優勝を飾りました。これはセベールにとってF1初勝利であり、実に13年ぶりとなるフランス人ドライバーによる優勝でもありました。2位にはBRMのジョー・シフェール、3位にはマーチのロニー・ピーターソンが入り、表彰台を彩りました。既にドライバーズチャンピオンが決定していたにもかかわらず、このレースは多くのチーム、ドライバーが参加する、激しい戦いが繰り広げられました。


背景：コース変更とチャンピオンシップ争い

この年のアメリカグランプリは、前年まで最終戦を務めていたメキシコグランプリが、ペドロ・ロドリゲスの事故死により中止されたため、最終戦という重要な位置づけとなりました。また、ワトキンス・グレン・サーキットは、この年からコースレイアウトが大幅に変更され、再舗装された新しいコースで行われました。コース全長も延長され、より挑戦的なレース展開が期待されました。

コンストラクターズランキングでは、フェラーリ、BRM、マーチの3チームが激しく2位を争っていました。このアメリカグランプリの結果が、最終的な順位に大きな影響を与えることになりました。


エントリーリスト：豪華な顔ぶれと欠場者

多くのワークスチームやプライベートチームが、高額な賞金を目指して参戦しました。しかし、アメリカ人ドライバーとして人気が高かったマリオ・アンドレッティとマーク・ダナヒューは、前週に雨で延期されたUSACチャンピオンシップのレースと日程が重なってしまい、アメリカグランプリへの出場を断念しました。

その他にも、各チームは様々な事情を抱えながら参戦しました。フェラーリは新型と旧型のマシンを複数台エントリーし、ティレルは地元出身のピーター・レブソンを起用するなど、様々なドラマがありました。


予選：スチュワートのポールポジション

予選は酷暑の中行われ、ジャッキー・スチュワートがポールポジションを獲得しました。しかし、予選2日目にはエマーソン・フィッティパルディがスチュワートの記録を上回りましたが、スチュワートはわずかな差でポールポジションを守り抜きました。アンドレッティとダナヒューはUSACチャンピオンシップのレース出場のため、決勝には参加できませんでした。


決勝：セベールの快走と悲劇の幕開け

決勝日も好天に恵まれましたが、アンドレッティとダナヒューがUSACチャンピオンシップに出場したため、多くの観客は彼らを見る機会を逃しました。スタートではハルムがトップに立ちましたが、すぐにスチュワートがトップに躍り出ました。しかし、レース中盤以降はタイヤの消耗が激しくなり、セベールがスチュワートを追い抜いてトップに立ちました。

その後、セベールはイクスの猛追を受けながらも、49周目にイクスのマシントラブルとアクシデントによりリードを広げました。2位争いはシフェールとピーターソンの間で展開され、最後はシフェールが僅差で2位を守り抜きました。セベールは、余裕を持って優勝を飾りました。


レース結果とその後：喜びと悲しみ

セベールの初優勝は、1958年のモナコグランプリ以来となるフランス人ドライバーの勝利であり、大きな喜びとなりました。一方、このレースはジョー・シフェールにとって、そしてBRMチームにとっても悲劇の始まりとなりました。シフェールは、アメリカグランプリ後に行われた非選手権レースで事故死してしまいました。この事故は、F1界に大きな衝撃を与えました。また、ベテランドライバーのヨアキム・ボニエも、翌年のスポーツカーレースで事故死しました。

アメリカグランプリは、セベールの初優勝という明るい話題と、シフェールとボニエの死という暗い影が共存する、忘れられないレースとなりました。 このレースは、チャンピオンシップ争い、タイヤ開発競争、そしてドライバーたちのドラマが凝縮された、非常に記憶に残る一戦だったと言えるでしょう。

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