1971年尖閣諸島反日デモ

1971年尖閣諸島反日デモについて

1971年、尖閣諸島の領有権を巡り、中国系留学生らによる大規模な反日デモが発生しました。このデモは、単なる抗議活動にとどまらず、その後の尖閣諸島問題に大きな影響を与えることになります。

デモの背景

尖閣諸島は、南シナ海に位置する無人島です。1960年代当時、周辺海域では台湾漁民による不法入域が頻発していました。しかし、当時は台湾を統治する中華民国政府（以下、国府政府）も、中国大陸を支配する中華人民共和国政府も、領有権を明確に主張することはありませんでした。

ところが、1968年に尖閣諸島近海で海底油田の存在が指摘されると、状況は一変します。当時、排他的経済水域は設定されていませんでしたが、尖閣諸島は台湾と非常に近い位置にありました。国府政府は、資源開発を目的として、尖閣諸島の実効支配をアピールするようになります。具体的には、自国の旗を掲揚したり、アメリカの石油会社に採掘権を認可するなどの行動を起こしました。

これに対し、日本政府と琉球政府は、尖閣諸島が石垣市に属すると主張し、警察の救難艇による警備を実施。接近する台湾漁船に退去を命じるなど、対抗措置を取りました。1970年7月には領域表示板を設置しています。一方で、日本、国府政府、韓国の3ヶ国による共同開発という妥協案も模索されていました。

反日デモの勃発

1971年1月29日、旧正月を迎え、アメリカ・サンフランシスコにあるカリフォルニア大学バークレー校の中国系学生が、「尖閣諸島は国府領土とすべき」と主張する「主権擁護同盟」を設立しました。この学生団体の多くは、国府政府を支持する台湾からの留学生でしたが、中には共産主義化した中国大陸から逃れてきた中国人も含まれていました。

「主権擁護同盟」は、中国人街のセントメリー公園で抗議集会を開催し、その後、在サンフランシスコ中華民国領事館へ向かいました。「共同開発案は主権放棄に等しい」として、国府政府の「弱腰外交」を非難。さらに、在サンフランシスコ日本領事館に対し、40分間にわたる抗議デモを実施しました。

この反日デモは、アメリカ各地の中国人社会に広がり、ロサンゼルス、ニューヨーク、ワシントンDCでも数千人規模のデモが行われました。これらのデモは、日本による尖閣諸島領有を批判するものでした。デモ自体は比較的平和的に行われましたが、ロサンゼルスの日本領事館では、中国人学生代表と領事館長が会見し、それぞれの主張を述べ合いました。

デモの影響

このデモをきっかけに、共同開発案は立ち消えとなりました。国府政府は、1971年6月に尖閣諸島の領有権を正式に主張します。この学生運動は、現在も保釣運動として、世界中の中国人社会で活発に行われています。

また、この反日デモは香港にも飛び火し、1971年8月13日にはビクトリア公園でデモ隊が即席の日本国旗を燃やして気勢を上げました。香港大学でも、8月22日に日本の旧軍艦旗を焼き捨てる集会が開かれ、いずれも1000人以上が参加したとされています。

1971年10月25日、国際連合ではアルバニア決議により、国府政府に代わって中華人民共和国が国連常任理事国の地位を獲得します。中華人民共和国は、中国人社会の盟主のように振る舞い、国府政府の尖閣諸島領有権主張をも取り込みました。そして、北京放送は1971年12月30日に、「日本は（尖閣諸島を）台湾と一緒に中国へ返還せずにアメリカの占領に委ねた」という趣旨の放送を行い、日本に対して領有権を主張しました。

この一連の出来事は、尖閣諸島問題を複雑化させ、今日に至るまで、その影響は続いています。

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