1972年フランスグランプリ

1972年フランスグランプリ：火山性岩石が彩った、危険とドラマのレース

1972年のF1世界選手権第6戦、フランスグランプリは、7月2日にシャレード・サーキットで開催されました。2年ぶりに開催されたこのサーキットは、新たな安全基準を満たすための改修工事が行われていましたが、コース周辺の火山性岩石の落下という新たな危険性が懸念されていました。

レースまでの道のり

前戦ベルギーGPから約1ヶ月、オランダGPはサーキット改修のためキャンセルされました。その間、ル・マン24時間レースではグラハム・ヒルとアンリ・ペスカロロ組がマトラで優勝、ヒルは世界三大レース制覇という偉業を達成しました。しかし、このレースで元GPDA会長のヨアキム・ボニエが事故死するという悲劇も起きています。続くイタリアGPはフェラーリの不参加もあり、わずか7台での開催となりました。

エントリーリストの変動

このフランスGPでは、いくつかのチームに変化がありました。ティレルは新車005を投入。しかし、胃潰瘍で前戦を欠場したジャッキー・スチュワートはテストできず、セベールが005をドライブすることになりました。また、地元出身の新人パトリック・デパイユが参戦。フェラーリはレガツォーニが負傷したため、ギャリが代役を務め、ベルがテクノで参戦。アンドレッティとレブソンはアメリカでのレース参加のため欠場し、マクラーレンはレッドマンが代役を務めました。マーチは失敗作の721Xを諦め、721Gを使用。ル・マンを制したマトラはMS120Dを投入し、スクリバンテ・ラッキーストライク・レーシングはチャールトンを擁してヨーロッパ進出を果たしました。

予選：エイモンの最後の輝き

セベールは新型ティレル005で好タイムを記録するもクラッシュ、手首を負傷し旧型マシンに。クリス・エイモンが、1970年大会のポールポジションタイムを5秒も上回る2分53秒4でキャリア5回目にして最後のポールポジションを獲得しました。ハルムが2番手、スチュワートとイクスが2列目に続きました。3列目にはシェンケンとマルコという意外な組み合わせが並び、セベールとフィッティパルディを押し下げました。ベルトワーズはマシントラブルにより最後尾からのスタートとなりました。

決勝：落石がレースを狂わせる

5万人以上の観客が見守る中、ポールポジションのエイモンがトップを快走。オープニングラップでフィッティパルディが順位を上げました。しかし、コース脇を走ったマシンが岩石をコース上に飛ばすという危険な事態が発生。9周目にマルコが落石による事故で左目を負傷し、ドライバー引退を余儀なくされました。20周目にはトップを走るエイモンが落石でタイヤをパンクさせ、スチュワートがトップに。イクスも落石でパンクし、フィッティパルディが2位に浮上。レース中、10台ものマシンが落石によるタイヤパンクに見舞われました。

スチュワートは復帰戦を勝利で飾り、エルフをスポンサーとするティレルにとっても大きな勝利となりました。フィッティパルディが2位、エイモンが猛追を見せ3位に入賞。セベールは負傷しながらも4位、ピーターソンが5位、ヘイルウッドが6位となりました。落石の危険性から、シャレード・サーキットでのF1開催はこの年限りとなり、翌年はポール・リカール・サーキットに移されました。

主要記録

スチュワート：通算20勝
エイモン：最後のポールポジション、表彰台、ファステストラップ
デパイユ：初出走
ベルトワーズ：50戦目
マルコ：最終出走
ウォーカー：最終完走
* マトラ：最後のポールポジション、表彰台、ファステストラップ

このレースは、スチュワートの復活勝利、エイモンの最後の輝き、そしてシャレード・サーキットの危険性を浮き彫りにした、記憶に残る一戦となりました。危険なコース状況の中での戦いは、ドライバーたちの高い技術と勇気を改めて印象づけたと言えるでしょう。シャレード・サーキットでのレースは、この1972年を最後に幕を閉じました。

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