1973年の航空

1973年:激動と変革の航空界



1973年は、世界の航空史において非常に多くの出来事が凝縮された年でした。長らく続いたベトナム戦争の終結、二件の重大な航空事故、新世代機の選定、そして記録への挑戦など、多岐にわたるニュースが航空界を賑わせました。

ベトナム戦争の終結とその後



この年の最も大きな出来事の一つは、1月27日にパリ協定が発効し、ベトナム戦争が公式に終結したことです。戦争終結に先立つ1月には、航空戦におけるアメリカ軍最後の撃墜記録が海軍のF-4ファントムによって樹立され、また大型爆撃機B-52による最後の作戦飛行も実施されました。戦争終結後、2月下旬にはアメリカ海兵隊のヘリコプターが北ベトナム沿岸での機雷除去作業を開始し、戦争の後処理が進められました。

相次ぐ悲劇的な事故



1973年には、二件の重大な航空事故が発生しました。

リビア航空機撃墜事件(2月21日): イスラエルが占領するシナイ半島上空で、進路を誤って飛行していたリビア航空ボーイング727旅客機がイスラエル空軍機により撃墜されました。この悲劇により、搭乗していた乗員・乗客のほとんどが犠牲となりました。
ツポレフTu-144墜落事故(6月3日): パリ航空ショーで展示飛行を行っていたソビエトの超音速旅客機ツポレフTu-144(SSSR-77102号機)が、パリ郊外のル・ブルジェ空港付近に墜落しました。この事故で、搭乗していた乗員全員と地上の住民に犠牲者が出ました。

また、9月11日には、カリフォルニア州で開発が進められていた空飛ぶ車「AVE Mizar」の試作機が墜落し、プロジェクトの設立者を含む搭乗者が死亡する事故も発生しました。

新たな技術と記録への挑戦



アメリカ空軍は、新型攻撃機の選定を進めていました。1月18日に行われたフェアチャイルドYA-10とノースロップYA-9の比較審査の結果、後のA-10サンダーボルトIIとなるYA-10が採用されることが決定しました。

記録への挑戦も続けられました。7月25日には、ソビエトのアレクサンドル・フェドトフが試験機E-266に搭乗し、高度36,240メートルという当時の高高度飛行記録を樹立しました。一方、ホームビルト機での世界一周飛行に挑戦していたアメリカのドン・ティラーは、日本とアリューシャン列島の間で悪天候に見舞われ、この年の世界一周飛行を一時断念せざるを得なくなりました(彼は1976年に挑戦を成功させています)。

新規航空会社の誕生と事件



この年には、二つの航空会社が新たに運航を開始しました。

アイスランドエア: 1973年に創業しました。
バハマス・エア: 6月7日に運航を開始しました。

また、日本では特異な事件が発生しました。6月23日、栃木県宇都宮市の陸上自衛隊駐屯地から、飲酒した隊員が連絡機LM-1を無断で持ち出し離陸、そのまま機体と共に消息を絶つという「自衛隊機乗り逃げ事件」が発生し、世間の注目を集めました。

国際情勢と航空機の役割



10月6日に勃発した第四次中東戦争では、航空機が緒戦から重要な役割を担いました。戦争開始直前の9月13日には、シリア沖の地中海上空でシリア空軍とイスラエル空軍の間で大規模な航空戦が発生し、多数のシリア軍機が撃墜される事態となりました。また、戦争期間中には、アメリカ空軍の大型輸送機C-5が約20,000キロメートルにも及ぶ長距離飛行を行い、イスラエルへの物資輸送任務を遂行し、その戦略的重要性を示しました。

航空界の功労者たち



1973年には、航空および宇宙開発における功績を称える賞の受賞者が発表されました。

ハーモン・トロフィー: エドワード・ナッシュ、マルコム・フォーブズ Sr.に贈られました。宇宙飛行士部門では、チャールズ・コンラッド Jr.、ポール・ワイツ、ジョゼフ・カーウィンが選ばれています。
デラボー賞: 宇宙飛行士のチャールズ・コンラッド Jr.、アラン・L・ビーン、ジョゼフ・カーウィン、ポール・ウェイツ、ジャック・R・ルースマ、オーウェン・K・ガリオット、そして高高度記録を樹立したソビエトのアレクサンドル・フェドトフが受賞しました。

1973年は、ベトナム戦争の終結という歴史的転換点の中で、悲劇と技術革新、記録への挑戦、そして地域航空の発展が同時に進行した、航空史における印象深い一年と言えるでしょう。

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