1973年ブラジルグランプリ

1973年ブラジルグランプリ：ブラジルF1初開催とフィッティパルディの凱旋

1973年2月11日、ブラジル・インテルラゴス・サーキット。F1世界選手権第2戦、ブラジルグランプリが開催されました。これはブラジルにおける初のF1世界選手権レースという記念すべきイベントでした。前年にエマーソン・フィッティパルディがブラジル人として初のF1世界チャンピオンに輝いたことで、ブラジル国内でのF1人気は急上昇。その熱気に後押しされる形で、前年にF1非選手権レースとしてブラジルGPが開催され、翌1973年からインテルラゴスでのF1世界選手権レース開催が実現したのです。

激戦の予選

アルゼンチンGPから2週間後というタイトなスケジュールの中、多くのチームがブエノスアイレスから直接インテルラゴスへと移動しました。ドライバーの顔ぶれはアルゼンチンGPとほぼ変わらず、唯一の新顔は地元出身のルイス・ブエノ選手でした。彼はサーティースからTS9Bマシンでスポット参戦。前年のブラジルGPではマーチマシンをドライブし6位に入賞しており、F1経験はこれが初めてではありませんでした。

ロータスチームは、地元の英雄エマーソン・フィッティパルディに勝利をもたらそうと懸命のテストを実施しました。しかし、ポールポジションを獲得したのはチームメイトのロニー・ピーターソン。フィッティパルディは僅か0.2秒差で2番手スタートとなりました。2人のロータス勢に続く3番手はジャッキー・イクス（フェラーリ）。フロントローとの差は1.3秒と、ロータス勢の速さが際立っていました。

熱狂の決勝レース

レース当日は気温が非常に高く、スタートからブラジル観衆の期待を一身に背負った2人のブラジル人ドライバーが好スタートを切ります。フィッティパルディがトップに立ち、カルロス・パーチェがスチュワート、ピーターソン、イクスらを抜き2番手に浮上。しかし、パーチェはすぐにスチュワート、ピーターソンにポジションを奪われ、その後リアサスペンショントラブルでリタイアを余儀なくされました。

一方、ピーターソンはスチュワートと激しい2位争いを展開しますが、6周目にホイールのトラブルでクラッシュ。上位陣の順位は、フィッティパルディのトップを維持したまま推移していくかに見えましたが、後方からデニス・ハルムが追い上げてきます。ハルムは12周目にベルトワーズを、15周目にはイクスを抜き去り、3位に浮上。イクスはタイヤパンクでピットインし、ベルトワーズも電気系統トラブルでリタイア。その結果、レガツォーニが4位に浮上したものの、タイヤ交換でピットインしたため、メルツァリオが4位に繰り上がりました。

フィッティパルディはスチュワートに14秒もの差をつけ、ファステストラップも記録。8万人の観客が見守る中、スタート・トゥ・フィニッシュで優勝を飾りました。この勝利に、ロータスチームの総帥コーリン・チャップマンは歓喜のあまり帽子を高く投げ上げました。スチュワートは2位、ハルムが3位表彰台を獲得。メルツァリオは自己最高位の4位、イクスは5位、レガツォーニはBRM移籍後初ポイントとなる6位でフィニッシュしました。

フィッティパルディは、チャップマンとスチュワートらから祝福を受け、コースになだれ込んだ観衆からブラジル国旗を贈られました。この日のインテルラゴスは、ブラジルモータースポーツ史上に残る、熱狂に包まれた一日となったのです。フィッティパルディは開幕2連勝という完璧なスタートダッシュを決めました。

主要記録

初ポールポジション：ロニー・ピーターソン
唯一の出走：ルイス・ブエノ
* フェラーリ200戦目の出走

エマーソン・フィッティパルディの平均速度は183.822km/h、ファステストラップは2分35秒でした。フィッティパルディは全40周をトップで走りきりました。このレースは、ブラジル、そしてF1の歴史に刻まれた重要な一戦となりました。

もう一度検索