1973年マウンテンビュー空中衝突事故

1973年マウンテンビュー空中衝突事故

1973年4月12日、アメリカ合衆国カリフォルニア州のマウンテンビュー上空において、痛ましい航空事故が発生しました。この日、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用するコンベア990型機（CV-990）と、アメリカ海軍のロッキードP-3オライオン型機（P-3）が飛行中に衝突。この悲劇により、両機に搭乗していた計17名のうち16名が尊い命を失いました。モフェット連邦飛行場を発着する両機が、同じ着陸滑走路への進入過程で発生した事故として記録されています。

事故の詳細

事故に関わったのは、NASAが所有する登録記号N711NAのコンベア990-30A-5型機と、アメリカ海軍の登録記号157332のロッキードP-3オライオン型機でした。

NASAのコンベア990（CV-990）は、この日、測量機器の試験飛行を実施していました。搭乗していたのは、研究者8名と3名の乗員を含む計11名です。モントレー湾上空で試験を終えた後、母港であるモフェット連邦飛行場への帰還途中でした。

一方、アメリカ海軍のP-3（P-3）は、同じくモフェット連邦飛行場を拠点に、付近の空域で訓練飛行を行っていました。この機体には6名の乗員が搭乗しており、約1時間半にわたりタッチアンドゴーの訓練を繰り返していました。

午後2時46分頃、CV-990は航空交通管制官に対し、飛行場から南へ10マイルの位置を飛行していることを報告し、直線的な最終進入経路への誘導を要請しました。これに対し、管制官はCV-990に滑走路32Rへの着陸を許可し、滑走路から7マイル手前で再度報告するよう指示しました。その約2分後、P-3が降着装置を降ろした状態で飛行場付近を旋回していると報告し、滑走路32Lへの進入経路に入ったことを管制官に伝えました。

しかし、午後2時49分、管制官は突如としてCV-990に対し、当初指示していた32Rではなく、滑走路32Lへの着陸を許可しました。CV-990のパイロットたちはこの指示変更に対して特に疑問を呈することなく、新しい指示に従いました。

衝突と墜落

両機が滑走路32Lへの進入を試みる中、高度約91メートル（300フィート）という低高度で空中衝突が発生しました。CV-990がP-3の胴体上部および尾部に激突したのです。この衝撃により、両機は制御不能に陥りました。衝突後、機体は滑走路から約0.3マイル手前に位置するサニーベール・ゴルフコースに墜落し、炎上しました。

この衝突事故による犠牲者は、CV-990の搭乗者11名全員と、P-3の搭乗者6名のうち5名の合計16名に上りました。P-3の乗員のうち1名（22歳のアメリカ海軍兵士）だけが、墜落の衝撃で機外に投げ出されたことにより、奇跡的に一命を取り留めました。しかし、彼は脊椎骨折や脳震盪などの重傷を負いました。

事故現場の周辺では、墜落の影響によりベイショア・フリーウェイが約3時間にわたり閉鎖されるなど、交通にも大きな影響が出ました。

事故調査と原因

事故発生後に行われた調査により、この悲劇の主要な原因は、航空交通管制官の判断ミスと指示の混乱にあると特定されました。管制官は当初、CV-990とP-3に対してそれぞれ異なる滑走路（32Rと32L）への進入を指示していました。しかし、P-3が滑走路32Lへの進入経路に入ったことを報告した後、CV-990に対しても同じ滑走路32Lへの着陸を許可するという、矛盾した指示を出したことが事故の引き金となりました。

CV-990のパイロットたちがこの指示変更に対して疑問を抱かず、その理由を確認しなかったことも、結果として両機を同じ進入経路へと向かわせる要因となりました。また、両機のパイロットは接近する互いの機体を視認し、衝突を回避するための適切な行動をとることができませんでした。

この事故は、コンベア990型機にとっては5番目の死亡事故となりましたが、それ以降、同型機による死亡事故は報告されていません。また、NASAが保有する中・大型の航空機で発生した唯一の死亡事故としても、この事故は特筆されています。管制指示の正確性と、複数の機体が同時に飛行場周辺で活動する際の調整の重要性を改めて浮き彫りにした事故と言えるでしょう。

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