1977年のロードレース世界選手権

1977年FIMロードレース世界選手権：激動のシーズンと新たな伝説

1977年のFIMロードレース世界選手権は、第29回大会として、3月にベネズエラのサン・カルロス・サーキットで幕を開け、イギリスGPで幕を閉じました。全13戦という、それまでの大会よりスケールアップしたシーズンとなりました。この年は、いくつかの重要な変更点がありました。まず、ポイントシステムが改定され、全レースのポイント合計でチャンピオンが決定されるようになりました。このシステムは、1991年を除き、現在まで採用されています。

もう一つの大きな変化は、マン島TTレースが世界選手権から外れ、代わりにイギリスGPがシルバーストン・サーキットで開催されるようになったことです。マン島TTはアップダウンの激しいコースでしたが、シルバーストン・サーキットは高低差の少ない比較的フラットなコースでした。また、ベネズエラGPが新たに開催され、選手権は全13戦となりました。しかし、オーストリアGPでは、350ccクラスで多重クラッシュによる死亡事故が発生し、500ccクラスでは安全性を懸念したトップライダーたちのボイコットという、暗い影が差し込む出来事もありました。

このシーズンは、レジェンド、ジャコモ・アゴスチーニにとって最後のグランプリとなりました。15回の世界タイトルを獲得し、122勝という金字塔を打ち立てたアゴスチーニでしたが、ヤマハへの復帰後も勝利を掴むことができず、シーズン終了と共に引退を決意しました。彼の偉大な記録は、いまだ破られていません。

この年から、カワサキがグランプリに復帰しました。既にアメリカや耐久レースで実績を積んでいたカワサキは、250ccクラスにKR250を投入。デビュー戦でポールポジションを獲得し、2勝を挙げるなど、その潜在能力の高さを示しました。翌年にはKR350も開発され、中排気量クラスを席巻する勢力となるのです。

各クラスの戦いを振り返る

500ccクラス

500ccクラスは、前年のチャンピオン、バリー・シーンがスズキから参戦しました。彼は自身のラッキーナンバーである7番をつけてレースに臨み、開幕戦ベネズエラGPを制覇しました。その後も安定した走りを見せ、ドイツGP、ベルギーGPなど、複数のレースで勝利を収めます。特にベルギーGPでは、グランプリ史上最速となる平均速度217.37km/hで優勝しました。シーズン終盤には、オーバーヒートにより苦戦もありましたが、見事タイトル防衛を果たし、イギリスの国民的英雄となりました。そして、大英帝国勲章5等勲士（MBE）を授与されました。ヤマハ勢では、スティーブ・ベイカーがランキング2位を獲得しましたが、シーズン終了後にチームを離れることになりました。

350ccクラス

350ccクラスは、ヤマハTZ350が圧倒的な強さを誇りました。特に、ヤマハモーターNVが独自に開発した3気筒TZ350は、片山敬済とアゴスチーニが駆りました。片山は、コースの特性に合わせて2気筒と3気筒を使い分け、見事な走りを披露し、日本人として初のワールドタイトルを獲得しました。アゴスチーニは、この特殊なマシンに苦戦しましたが、ドイツGPで2位を獲得しました。

250ccクラス

250ccクラスは、ハーレーダビッドソン、ヤマハ、モルビデリ、そしてカワサキがしのぎを削る戦いが繰り広げられました。ハーレーダビッドソンはヴィラとウンチーニが複数勝を挙げましたが、マシントラブルに悩まされました。カワサキは初年度から速さを見せつけ、清原明彦がドイツGPでポールポジションを獲得、ミック・グラントが2勝を挙げました。しかし、彼らもまた、マシントラブルに苦しめられました。そんな中、モルビデリのマリオ・レガが安定した走りで、見事初タイトルを獲得しました。

125ccクラス

125ccクラスは、モルビデリとビアンキの圧倒的な強さで幕を閉じました。ビアンキは5連勝を含む6勝を挙げ、2年連続でチャンピオンを獲得しました。

50ccクラス

50ccクラスは、ブルタコのアンヘル・ニエトが3年連続6度目のタイトルを獲得しました。全戦表彰台という圧倒的な強さを見せつけました。しかし、ユーゴスラビアGPでは、ウーリッヒ・グラフがクラッシュにより命を落とすという悲劇も起きました。

1977年シーズンは、ポイントシステムの変更、新たなチームの参戦、レジェンドの引退、そして悲劇など、様々な出来事が詰まった、記憶に残るシーズンとなりました。この年のレースは、モーターサイクルスポーツの歴史に大きな足跡を残しました。

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