1980年のヨーロッパF2選手権

1980年のヨーロッパF2選手権は、全12レースに渡り繰り広げられた、ドラマと悲劇が入り混じったシーズンでした。この年のチャンピオンに輝いたのは、トールマンチームから参戦したブライアン・ヘントンです。卓越したドライビングテクニックで多くのレースを制し、見事タイトルを獲得しました。チームメイトのデレック・ワーウィックも好成績を収め、チャンピオンシップで2位に入賞。さらに、マーチ・エンジニアリングのテオ・ファビがシリーズ3位となり、トップ3を占めるチームの勢力図が明確になったシーズンでした。

しかし、このシーズンは輝かしい勝利だけでなく、深い悲しみも同時に刻み込まれました。第2戦では、他車のクラッシュによるアクシデントでコース上にタイヤホイールが飛び出し、マルクス・ホッティンガー選手が頭部に直撃する痛ましい事故が発生。その場でレースは中止となり、ホッティンガー選手は帰らぬ人となりました。この事故は、ドライバーの安全確保の重要性を改めて浮き彫りにする、衝撃的な出来事でした。

さらに、第9戦サンドフォールトでは、ウォームアップ走行中にハンス＝ゲオルグ・ブルガー選手が高速でコースアウト。安全柵に激突し、頭部に致命傷を負ってしまいました。病院への搬送後、集中治療室で治療を受けましたが、2日後に亡くなりました。彼のマシンは前日の予選で軽微なクラッシュを起こしており、サスペンションとノーズが交換されたばかりでした。事故は、修理を終えたマシンで初めて全開走行をした際に発生しました。この事故の現場に最初に駆けつけたベッペ・ガビアーニは、ブルガー選手のヘルメットが二つに割れていたと証言しており、事故の衝撃の大きさを物語っています。

これらの痛ましい事故は、F2選手権の歴史に暗い影を落としました。関係者やファンに深い悲しみを与え、レースの安全性に対する意識を高める契機となりました。

チャンピオンシップでは、各レースの上位6名に9-6-4-3-2-1点が与えられ、ベスト9戦の結果がカウントされるポイントシステムが採用されました。ヘントンの圧倒的な活躍により、トールマンチームはコンストラクターズタイトルも獲得したと言えるでしょう。しかし、勝利の影には、2人のドライバーを失ったという大きな犠牲がありました。1980年のヨーロッパF2選手権は、スピードと興奮、そして深い悲しみを同時に記憶されるシーズンとなったのです。

なお、このシーズンでは、チャンピオンシップにはカウントされない非選手権レースも複数開催されました。これらのレースは、ドライバーたちの腕前を試す場、そしてさらなる経験を積む機会として機能していたと考えられます。

参考文献：
Phillips, Ian (1980). “Formula 2: Henton and Toleman; undisputed champions”. Autocourse 1980-81. Hazleton Publishing. pp. 220–221. ISBN 0-905138-12-0

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