1980年ドイツ連邦議会選挙

1980年西ドイツ連邦議会選挙：シュミット政権の続投とシュトラウス旋風の影

1980年10月5日、西ドイツ連邦共和国において連邦議会選挙が行われました。この選挙は、当時首相であったヘルムート・シュミット率いる社会民主党(SPD)と、自由民主党(FDP)の連立政権の続投をかけた重要な選挙でした。

対するは、キリスト教民主同盟(CDU)と[キリスト教社会同盟]の連合。その首相候補として指名されたのは、CSUのフランツ・ヨーゼフ・シュトラウスでした。シュトラウスは党内においても最右派に位置する人物であり、その政治姿勢は多くの有権者、特に中間層に強い懸念を与えました。

選挙は、シュミット首相とシュトラウス氏による激しい選挙戦となりました。選挙制度は小選挙区比例代表併用制で、連邦議会定数は496議席。全国集計で5％以上の得票、または小選挙区で3名以上の当選者を獲得した政党のみが、比例代表制による議席配分を受けるという仕組みでした。

選挙の結果、SPDとFDPの連立与党は勝利を収め、政権を維持しました。投票者数は4323万1741名中3829万2176名で、投票率は88.6%という高い数値を記録しました。有効投票数は3793万8981票でした。

SPDとFDPの勝利の背景には、シュトラウス氏の存在が大きく影響しています。彼の右傾的な政治姿勢は、CDU支持層を含む中間層の有権者に強い不安を与え、連立政権への支持へと傾斜させる結果となりました。特にFDPは、シュトラウス政権誕生を懸念するCDU支持者の一部や、SPDとFDPの連立崩壊を危惧したSPD支持者からの票を獲得し、第2投票で10.6%という当時の最高得票率を記録しました。これは、シュトラウス氏への警戒感が、中間層の票を連立政権に集束させたことを示しています。

一方、この選挙では、環境政党である緑の党が連邦議会選挙に初挑戦しました。当時、一部の州議会で議席を獲得していた緑の党でしたが、連邦議会選挙では第2投票で1.5%と低迷し、議席獲得には至りませんでした。

この1980年の連邦議会選挙は、シュトラウス氏の政治姿勢が選挙結果に大きな影響を与えた、重要な選挙として歴史に刻まれました。中間層の不安と、その不安を解消するための連立政権への支持という構図が、選挙結果を決定づけたと言えるでしょう。また、この選挙は、今後台頭していくであろう緑の党の存在を示唆するものでもあったと言えるでしょう。今後のドイツ政治において、環境問題が重要な議題となっていく予兆を示したと言えるのではないでしょうか。

選挙データ

連邦首相： ヘルムート・シュミット（ドイツ社会民主党）
与党： 社会民主党（SPD）＋自由民主党（FDP）
連邦議会定数： 496議席
選挙制度： 小選挙区比例代表併用制
有権者数： 43,231,741名
投票日： 1980年10月5日
投票者数： 38,292,176名
投票率： 88.6％
有効票数： 37,938,981票（政党投票）
超過議席： SPD 1議席

参考文献

* 渡辺重範著『ドイツ近代選挙制度史』成文堂

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