1985年の航空

1985年の航空分野

1985年は、航空技術の進化と悲劇的な事故が交錯した、航空史上特筆すべき一年でした。この年は、多くの新型航空機やミサイルが登場し、国際的な共同開発が進展する一方で、複数の重大事故が発生し、多数の尊い命が失われたことでも記憶されています。

技術革新と新型機

技術開発の面では、様々な分野で進展が見られました。2月にはフィンランド製の初等練習機、L-70 ヴィンカが初めて空へ飛び立ちました。また、イギリスでは垂直離着陸機YAV-8Bを基にしたハリアーGR.5の原型機が4月に初飛行を実施しました。ミサイル開発も活発で、フランスの潜水艦発射弾道ミサイルM4が5月に完成し、空対空ミサイルAIM-120 アムラームの発射試験が成功を収めました。

5月に開催されたパリ航空ショーでは、ソ連（当時）が開発した大型輸送機アントノフAn-124が初めて一般に公開され、その巨大さが注目を集めました。ヘリコプター分野では、アメリカのシコルスキーS-76 シャドウハーツが6月に初飛行を成功させています。日本国内でも、川崎重工業が開発したジェット練習機T-4が7月に初めて空を舞いました。これは日本の航空産業における重要な一歩でした。

将来のヨーロッパの主力戦闘機となるユーロファイター タイフーンの開発契約が、西ドイツ（当時）、イギリス、イタリアの間で8月に署名されたことも、この年の重要な出来事です。軍事技術としては、軌道上の衛星を破壊する実験が9月に行われ、F-15戦闘機から発射されたASM-135ミサイルが目標衛星に命中するという成果を上げています（衛星攻撃兵器）。宇宙開発では、スペースシャトル「アトランティス」が10月に初のミッションを遂行しました。また、地域航空機分野では、エール・メディテラネが12月にATR 42の運航を開始し、新しい時代の幕開けを告げました。ルーマニアでも、独自開発のジェット練習機IAR 99が12月に初飛行しています。

相次ぐ重大事故

しかし、1985年は多くの悲劇に見舞われた年でもありました。2月にはイベリア航空610便の旅客機が墜落し、148名の犠牲者を出しました。6月にはイスラーム過激派によるトランス・ワールド航空847便のハイジャック事件が発生し、乗客一名が殺害されるという痛ましい事件が起きています。

さらに、6月23日には二つの関連するテロ事件が発生しました。インド航空182便がアイルランド沖で爆破され、329名全員が死亡。これは航空機に対する爆破テロ事件としては当時史上最大の犠牲者数となりました。同日には、この事件と関連するとされる手荷物が成田空港で爆発し、手荷物係二名が犠牲になっています。

7月にはアエロフロート航空7425便の墜落事故で200名が死亡し、これはソ連のアエロフロート航空にとって最悪の事故となりました。8月にはアメリカのデルタ航空191便がダラスで墜落し、135名が亡くなりました。そして8月12日には、日本航空のジャンボ機、日本航空123便が群馬県の御巣鷹の尾根に墜落。この事故で520名が犠牲となり、単独の航空機事故としては史上最悪、航空事故全体でも史上2位の犠牲者数となりました。同じ8月には、イギリスのブリティッシュ・エアツアーズ28M便がマンチェスター空港で火災を起こし、55名が命を落としています。

年末にかけても悲劇は続きました。11月にはエジプト航空648便がハイジャックされ、特殊部隊による強行突入の際に56名の乗客が死亡する事件が発生しました。12月にはアロー航空1285便がカナダで離陸直後に墜落し、搭乗していた256名全員が犠牲となる凄惨な事故が起きています。

その他の出来事

これらの出来事に加えて、スペイン空軍の曲技飛行隊「パトルーラ・アギラ」が7月に結成され、航空ショーなどで活躍の場を広げました。また、12月には沖縄を拠点とする地域航空会社、琉球エアーコミューター株式会社（RAC）が設立されています。航空分野への貢献を称えるFAI・ゴールド・エア・メダルは、この年、ラルフ・P・アレックス氏に授与されました。

1985年は、技術の進歩が着実に進む一方で、信じがたいほど多くの人命が航空事故によって失われた、悲劇的な出来事が集中した年として、航空史に深く刻まれています。これは、航空の安全性がいかに重要であるか、そしてテロリズムがいかに無辜の人々を巻き込むかを強く認識させる一年となりました。

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