1990年沖縄県知事選挙

1990年沖縄県知事選挙

1990年11月18日に投票が行われた沖縄県知事選挙は、任期満了に伴うもので、平成に入って初めて執行された沖縄県の首長選出選挙であった。この選挙は、翌年春に予定されていた第12回統一地方選挙を控えた時期にあたり、各政党からは統一地方選の前哨戦として位置づけられるなど、全国的な注目度も高い選挙となった。

選挙の背景と構図

選挙戦の構図は、保守陣営を代表する現職の西銘順治氏と、革新勢力の統一候補として出馬した新人の大田昌秀氏による事実上の一騎打ちという、かつての沖縄県政においてしばしば見られた保革対決の様相を呈した。西銘氏は自由民主党と民社党の推薦を得て、4期目の当選を目指してこれまでの県政運営の実績を強調した。一方、大田氏は日本社会党や日本共産党、沖縄社会大衆党などの「革新共闘会議」の強力な支持を受け、現職県政からの転換を訴えた。

主な争点

この選挙における主な争点として挙げられたのは、多年にわたる西銘県政に対する有権者の評価に加え、当時国会で議論が白熱していた国連平和協力法案に対する賛否であった。この法案は、自衛隊の海外派遣につながる可能性が指摘され、特に沖縄では過去の戦争体験から平和希求の思いが強く、大きな論点となった。候補者のこの法案への姿勢は、支持層を左右する重要な要素となった。

選挙結果

10月29日の告示を経て本格化した選挙戦は、現職の組織力と新人の刷新を求める声がぶつかり合う展開となった。そして迎えた11月18日の投票日、即日開票の結果、革新統一候補である新顔の大田昌秀氏が、4期目を目指すベテラン知事であった西銘順治氏を見事破り、初当選の栄冠を掴んだ。この勝利により、沖縄県の県政は12年ぶりに革新勢力へと移行することになった。

勝敗の要因

大田氏の勝因

大田氏の当選にはいくつかの勝因が指摘されている。

比較的早い時期である1990年の年初に立候補の意向を表明したことで、革新陣営内での準備がスムーズに進み、各党の足並みが揃っていたこと。
最大の争点の一つであった平和協力法案に対し、明確に反対の立場を貫いたことが、平和志向の強い県民からの支持を得る上で決定的な要因となったこと。

西銘氏の敗因

一方、敗れた西銘氏には複数の敗因が挙げられている。

長期政権に対する多選批判の声が高まっていたこと。
平和協力法案への対応が影響したこと。西銘氏は当初、「憲法の枠内で」という立場を示しつつも法案成立に賛成の姿勢を示しており（後に修正したが）、この曖昧さや賛成寄りの姿勢が県民の反発を招いた。
長男が衆議院選挙へ、三男が県議会議員選挙へ立候補の動きを見せたことが、「県政の私物化」ではないかという批判を受け、イメージの悪化につながったこと。
保守陣営全体の選挙に向けた動きが、終始活発さを欠き、組織戦が十分に展開されなかったこと。

投票率

この選挙の最終投票率は76.78%を記録し、前回の知事選挙から2.68ポイント増加した。この高い投票率は、県民がこの選挙に寄せる関心の高さと、現県政に対する評価や平和協力法案への向き合い方といった争点に対するそれぞれの思いを投票行動に移した結果と言えるだろう。

まとめ

1990年の沖縄県知事選挙は、単なる任期満了に伴う選挙ではなく、沖縄の今後の針路、特に平和に対する姿勢と政治のあり方を巡る重要な選択の機会であり、革新勢力への政権交代という結果は、その後の沖縄県政に大きな影響を与える出来事となった。

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