1991年の鉄道

1991年（平成3年）は、日本の鉄道にとって多岐にわたる変化が訪れた一年となりました。新線開業、延伸、電化、廃止、そして新型車両の登場など、様々な動きが全国各地で見られました。

年明けの1月には、岡山県で親しまれてきた下津井電鉄線が全線廃止となり、多くの駅と共に歴史に幕を下ろしました。また、京浜急行電鉄の空港線の一部区間が一時休止となる出来事もありました。

春、3月を迎えると鉄道界の動きは一層活発になります。JR東日本では、相模線（茅ケ崎～橋本間）が念願の電化を果たし、新たな通勤路線としての機能強化が図られました。また、山形新幹線建設に向けた奥羽本線の改軌工事も本格化し、区間の運休や単線化が行われています。

同月には、成田国際空港への鉄道アクセスが大きく強化されました。JR東日本と京成電鉄がそれぞれ成田空港駅への新線・延伸区間を開業させ、「成田エクスプレス」などの空港アクセス列車が運転を開始。成田空港高速鉄道が第三種鉄道事業者としてこれらの区間を支える形となりました。

3月末には、愛知県の桃花台新交通が桃花台線を新規開業させ、都市交通の新たな形態を示すことになりました。また、千葉ニュータウンへのアクセスを担う北総開発鉄道も京成高砂駅までの延伸開業を果たし、都心からの利便性が向上しました。

4月には、山陽電気鉄道が主要駅の駅名を「電鉄～」から「山陽～」に改称するなど、駅名の変更が多数行われました。また、京王帝都電鉄相模原線に多摩境駅が開業し、沿線開発の進展が伺えます。

観光分野では、4月に嵯峨野観光鉄道が旧山陰本線の一部区間を活用した嵯峨野観光線を開業させ、トロッコ列車による新たな観光ルートが誕生しました。

6月には、千葉都市モノレールの2号線が延伸開業し、千葉市内の新たな交通手段として利用が始まりました。また、東北新幹線が東京駅まで延伸し、待望の東京駅乗り入れが実現しています。

夏の7月には、岡山県の片上鉄道線が全線廃止となりました。長年にわたり地域の物流や人々の移動を支えた産業鉄道の歴史が閉じられたのです。

秋、9月には、JR西日本の七尾線（津幡～和倉温泉間）が電化され、この区間の第一種鉄道事業をのと鉄道が承継するという、運営形態の変更も伴う大きな変化がありました。これにより、特急「しらさぎ」「雷鳥」などが和倉温泉駅まで乗り入れるようになり、利便性が向上しました。

事故の面では、5月に滋賀県の信楽高原鐵道信楽線で列車衝突事故が発生し、多数の死傷者が出るという痛ましい出来事がありました。この事故により、信楽線は長期にわたり運転を見合わせることになりました。

年末にかけても新線開業が相次ぎました。10月には神戸電鉄公園都市線の一部区間が開業。11月末には帝都高速度交通営団（現：東京メトロ）南北線が駒込～赤羽岩淵間で開業し、東京都心の地下鉄ネットワークがさらに拡充されました。12月には東海交通事業の城北線（勝川～尾張星の宮間）や、東京都交通局（都営地下鉄）12号線（現：大江戸線）の一部区間（光が丘～練馬間）が開業しています。

車両の面でも多くの新型車両が登場しました。JR各社からは、特急「あさぎり」用のJR東海371系・小田急20000形、JR西日本の207系・キハ120形、JR九州のキハ200形などが新たに運転を開始。また、都市部では京成3700形、北総開発鉄道7300形、帝都高速度交通営団9000系、東京都交通局5300形・12-000形といった新型通勤車両が導入され、輸送力増強やサービス向上に貢献しました。貨物列車でも、JR貨物のクキ1000形やコキ70形が登場しています。この年ブルーリボン賞には東武100系「スペーシア」、ローレル賞にはJR東日本251系「スーパービュー踊り子」と大阪市交通局70系が選ばれ、鉄道車両の技術やデザインの進歩が評価されました。

1991年は、路線の開業や電化によるネットワークの拡充、車両の近代化が進む一方で、歴史ある路線の廃止や安全に関わる事故も発生するなど、日本の鉄道が時代の変化と共に歩んだ、様々な出来事が凝縮された一年でした。

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