1998年沖縄県知事選挙

1998年沖縄県知事選挙：革新県政の終焉と保守の奪還

1998年11月15日、沖縄県知事選挙が執行され、新人の稲嶺惠一氏が現職の大田昌秀氏を破り、初当選を果たしました。この選挙結果は、2期8年続いた革新県政に終止符を打ち、8年ぶりに保守系が県政を奪還するという歴史的な転換点となりました。

選挙戦の構図

本選挙は、知事の任期満了に伴い実施されました。立候補したのは、3期目を目指す現職の大田昌秀氏（民主党、社民党、共産党、社大党など中道・革新系が支援）と、新人の稲嶺惠一氏（自民党など保守系が支援）、そして諸派の又吉光雄氏の3名です。しかし、実質的には大田氏と稲嶺氏による一騎打ちの様相を呈しました。

前回の知事選で大田氏を推薦した公明党は、今回は「大田氏を基軸とした自主投票」に転じました。この選挙の主な争点は、経済振興策と在日米軍普天間基地の移設問題でした。大田氏は「県外移設」を主張したのに対し、稲嶺氏は「北部陸上への軍民共用空港建設」と「政府との関係修復による経済振興」を訴えました。

投票結果と勝敗の要因

選挙の結果、稲嶺氏が当選し、保守系が県政を奪還しました。投票率は76.54%と、前回を10％以上も上回る高い関心を集めました。稲嶺氏は、不況の原因を「県政不況」であるとし、大田県政の失策を批判することで有権者の支持を広げました。また、企業が集まる那覇市での積極的な活動や振興策の訴えが功を奏し、革新系の強い地域でも支持を獲得しました。さらに、公明党支持層の約半分の支持も取り込むことに成功しました。

一方、敗れた大田氏は、基地問題の解決と経済振興を訴えましたが、政府との関係悪化により振興策の協議が停滞したこと、有権者の関心が「経済振興」に移る中で「基地問題」への訴えが弱まったこと、そして運動面で稲嶺陣営に後れを取ったことが敗因とされています。

選挙戦の裏側

2010年、当時の副官房長官であった鈴木宗男氏が、この選挙で稲嶺陣営に官房機密費3億円が渡っていたと証言しました。これにより、普天間基地移設問題において、本土の自民党政権が裏で沖縄の選挙に介入していたことが明らかになりました。選挙戦では、大田県政批判のポスターが大量に貼られ、大手広告代理店が関与し、「県政不況」などのキャッチコピーが用いられました。また、イメージ戦略のため、自民党政権の閣僚の応援は控えられ、本土政府と自民党の介入を隠蔽する形が取られました。

ジャーナリストの筑紫哲也氏は、この選挙を「広告宣伝技術が選挙で大きな成果を上げた例」と評しました。

その後の影響

この知事選以降、公明党は自民党への傾斜を強め、1999年の自自公連立政権成立への布石の一つとなりました。

この選挙は、沖縄の政治に大きな転換点をもたらし、その後の沖縄の政治情勢に大きな影響を与える出来事となりました。

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