2月内乱

2月内乱（オーストリア内戦）

2月内乱（ドイツ語: Februarkämpfe）、またはオーストリア内戦（ドイツ語: Österreichischer Bürgerkrieg）は、1934年2月12日から16日までの間にオーストリアで発生した一連の武力衝突です。オーストリア第一共和国の首相エンゲルベルト・ドルフース率いる政府（護国団などの右派勢力）と、オーストリア社会民主党及びその武装組織である共和国保護同盟との間で展開されました。この内乱は、国内の政治的緊張を高め、オーストリアの政治環境に深刻な影響を及ぼしました。

背景

第一次世界大戦後、オーストリア＝ハンガリー帝国が崩壊し、新しい国家としてドイツ・オーストリア国が設立されました。この国では、社会主義者と保守主義者が二大勢力として政治を二分し、社会主義者は労働者階級を基盤に、保守主義者は地方や上流階級に支持を受けていました。保守派はカトリック教会と連携を深めており、双方の陣営は武装した民兵組織を擁していました。

オーストリア社会民主党の党内での緊張感が高まる中、1927年には大規模なデモが発生し、多数の死傷者を出しました。この事件は、両陣営の対立を一層激化させ、以降の動乱の引き金となりました。さらに、1930年代に入ると、ドイツのナチズムの影響も強まり、オーストリアの政治情勢は不安定さを増していきました。

内戦の経過

1933年、ドルフース首相は議会を事実上閉鎖し、保守派の権力を強化する方針を決定しました。彼は、社会民主党及びその武装組織の活動を禁じる政策を進めました。続く1934年に入ると、ドルフースは社会民主党への圧力を高め、最終的な弾圧を進める決断に至ります。

2月12日、警察が社会民主党の拠点であるリンツのホテル・シッフを襲撃すると、共和国保護同盟の指導者であるリヒャルト・ベルナシェックが武力で抵抗し、これが内乱の引き金となります。各地での衝突が激化し、ウィーンやグラーツ、シュタイアーといった地域で集中的な戦闘が展開されました。特にウィーンでは、オッタクリングやカール・マルクス・ホーフといった場所での戦闘が記録されています。

内乱は3日間続き、その間に多くの市民が命を落としました。政府側の応援部隊が介入する中で、共和国保護同盟は徐々に追い詰められていきます。最終的に、2月16日までにはオーストリア内戦は収束し、社会民主党は事実上の敗北を喫することになります。

内戦の結果

この内戦により、政府側は118人、社会民主党側は196人が死亡し、大規模な逮捕が行われました。ドルフース政権は内乱を口実に社会民主党を完全に禁止し、これ以降のオーストリア政治において「オーストロファシズム」と呼ばれる権威主義的な体制が確立されます。5月には新たな憲法が制定され、祖国戦線が正式に唯一の合法的な政治組織となりました。

長期的な影響

オーストリア内戦は国際的な視点から見ると比較的小規模な事件かもしれませんが、オーストリアの歴史においては非常に重要な瞬間でした。この内戦の余波は、第二次世界大戦後にオーストリアが主権国家として再編される際にも見られ、社会民主党と保守派との間で新たな合意を形成する必要が生じました。最終的に、共存と調和のための「大連立」が導入され、政治的な安定が追求されることになりました。しかし、当時の分裂的なイデオロギーは、現代のオーストリア社会にも深く根付いています。このような歴史的背景があるため、今なお「赤」（社会主義者）と「黒」（保守主義者）との間の隔たりが存在しているのです。

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