20.3cm K(E)列車砲

20.3cm K(E)列車砲の概要

20.3cm K(E)列車砲は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって開発された特殊な鉄道砲です。この砲は、その主兵装がアドミラル・ヒッパー級重巡洋艦の余剰部品を転用して作られました。列車砲は占領されたフランスやベルギーでの沿岸防衛任務に使用され、一時代の技術の影響を受けています。

開発の背景

ナチス・ドイツが1933年に政権を掌握する中、再軍備計画が立ち上げられました。ドイツ陸軍総司令部は、クルップ社に新たな鉄道砲の設計を指示します。しかし、新しいデザインに時間がかかることから、クルップ社はすでに存在する旧型の砲を改良し、より短期間での提供を提案しました。その結果、1936年には緊急プログラムとして1939年までに15～28cmの砲が設計されることが決まりました。

設計の特徴

砲塔

20.3cm K(E)の砲塔は、元々アドミラル・ヒッパー級重巡洋艦に搭載される予定だったSKC/34 20.3cm砲8門を使用しています。砲塔の動きについては意見が分かれており、資料によっては移動度が異なります。移動は車体全体で調整が必要であり、砲自体の細かい調整は行えない仕組みになっています。

車体

車体は、第一次世界大戦時の21cm SK「ピーター・アダルベルト」の基本設計を流用しており、弾薬運搬の方法として弾薬クレーンが採用されています。また、いくつかの改良が加えられており、より効率的な運用が図られています。

弾薬システム

ドイツ陸軍は、この列車砲を開発するまで、海軍用の20.3cm弾薬が存在しなかったことを認識していませんでした。そこで、陸軍標準の21cm弾薬に対応させるための改造を試みましたが、経済的に困難であることが明らかになりました。そのため、海軍の弾薬システムが使用されることになり、独自の弾薬が兵站への負担を少なくさせる構造を持っていました。大砲は特定の場所に固定され、主に沿岸防衛用に運用されることになりました。

実戦の経歴

1942年7月8日までに、ドイツ陸軍において2両が687砲台に配備され、ここで沿岸防衛任務に従事しました。さらに、ブルターニュのパンポルに4両が532砲台に配備され、コタンタン半島には2両が685砲台に配置されました。これらの砲台は、1944年6月18日にアメリカ軍によって破壊されるまで役割を果たしました。

結論

20.3cm K(E)列車砲は、急速に形成されたナチス・ドイツの軍事力の象徴の一つであり、その特異な設計や運用法は、第二次世界大戦の技術的背景や戦局を反映しています。役割は限られていたものの、この列車砲は、戦争の中で重要な防衛手段となっていました。技術的な制約や弾薬供給の課題など、様々な要素が絡み合った中での運用は、鉄道砲という一つの兵器が持つ複雑さを示しています。

もう一度検索