2009年世界陸上競技選手権大会日本選手団

2009年ベルリン世界陸上：日本代表の挑戦とその成果

2009年の夏、陸上競技の世界最高峰が集う第12回世界陸上競技選手権大会が、ドイツの首都ベルリンで熱戦を繰り広げました。8月15日から23日までの9日間にわたり開催されたこの大会に、日本は総勢59名の選手団を派遣。男子32名、女子27名からなる精鋭チームは、高野進監督の指揮のもと、男子主将の澤野大地選手、女子主将の久保倉里美選手を中心に、世界の舞台での活躍を目指しました。

代表選考の経緯

選手団の選考は、各競技の特性に合わせて慎重に行われました。特に注目が集まるマラソンについては、2009年東京マラソン終了後に代表が正式に発表され、男女それぞれ5名が選出されています。

男子マラソン: 国内の主要マラソンである福岡国際、びわ湖毎日、そして東京マラソンで日本人最上位となった選手がまず代表に内定しました。これに、別府大分毎日マラソンの日本人トップ選手や、これら指定大会で好記録を残した選手の中から、選考会議を経て残りのメンバーが決定されました。
女子マラソン: こちらも東京国際女子、大阪国際女子、名古屋国際女子といった主要国際女子マラソンで日本人トップの選手が自動的に代表権を獲得。加えて、北海道マラソンの日本人トップ選手や指定大会での好記録者の中から、選考会議によって選出されました。

マラソン以外のトラック＆フィールド種目については、国内最大の選考会である日本陸上競技選手権大会が重要な位置を占めました。大会に先立ち、「参加標準記録AまたはBを突破した選手で、日本選手権の優勝者は自動的に代表に選出する」という明確な方針が示され、これに基づいて多くの選手が代表入りを果たしました。さらに、その後も標準記録を突破した選手の日本選手権でのパフォーマンスなどを考慮し、追加での選考が行われています。

目標と現実、そして課題

日本代表を率いる強化委員長は、現実的な目標として「メダル1個、入賞（8位以内）6個」を掲げ、これを目指しました。しかし、大会前から予期せぬ困難に直面します。男子ハンマー投の第一人者である室伏広治選手や、女子マラソンの有力選手である渋井陽子選手といったメダル候補たちが、故障のため無念の欠場となりました。

実際にベルリンの地で世界の強豪と対峙した多くの選手たちは、自身の持つ力を発揮しながらも、「記録の壁」あるいは「世界の壁」と呼ばれる高いハードルに阻まれる場面が散見されました。

最終的に、日本選手団は目標とほぼ同等の成績を収めます。獲得したメダルは2個、入賞数は5個でした。メダル数では目標を上回ったものの、入賞数ではわずかに届かず、多くの選手が世界のトップレベルとの差を痛感する結果となりました。この「記録の壁」「世界の壁」をいかに乗り越えていくかは、来る2012年のロンドンオリンピックを見据えた長期的な課題として、日本の陸上界に突きつけられたのです。

メダルと入賞の記録

ベルリン世界陸上における日本選手のメダル獲得者と入賞者は以下の通りです。

メダル獲得者
女子マラソン：尾崎好美選手（第一生命保険相互会社） 銀メダル
男子やり投：村上幸史選手（スズキ） 銅メダル

なお、大会の一環として行われた「マラソンワールドカップ」における団体成績（男子銅メダル、女子銀メダル）は、世界陸上選手権の公式なメダル数としてはカウントされないことにご留意ください。

入賞者（8位以内）
男子4×100mリレー：日本チーム（江里口匡史、塚原直貴、髙平慎士、藤光謙司） 4位
男子マラソン：佐藤敦之選手（中国電力） 6位
女子10000m：中村友梨香選手（天満屋） 7位
女子20km競歩：渕瀬真寿美選手（大塚製薬） 7位
* 女子マラソン：加納由理選手（セカンドウィンドAC） 7位

この大会での経験と結果は、日本陸上界にとって大きな糧となりました。メダル獲得や入賞といった輝かしい成果があった一方で、世界との差を改めて認識し、今後の強化策を練る上での重要なデータとなったのです。ロンドンオリンピックに向けて、選手たちはさらなる飛躍を目指し、課題克服への挑戦を続けていくことになります。

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