2010年の台風

2010年の台風は、太平洋北西部で発生する熱帯低気圧の活動が記録的に低調だった年です。年間発生数はわずか14個と、1951年の統計開始以来、最も少ない記録となりました。平年の約26個と比較すると、その少なさは際立っており、過去最少だった1998年の記録も下回っています。

発生数の少なさと特徴

2010年の台風発生数は、過去に20個を下回った1998年、1969年、2023年と並び、特に少なかった年として記録されます。日本への接近数も7個と少なく、統計史上4番目の少なさでした。特筆すべきは、上陸した2つの台風（4号と9号）が、いずれも九州西方沖から対馬海峡を通り、日本海側から上陸したという点です。太平洋側からの上陸が全くなかったのは異例でした。沖縄や伊豆・小笠原諸島への接近数も平年より少なくなっています。

台風の発生時期にも偏りが見られ、1号は3月に発生したものの、その後7月まで発生が途絶えました。8月から10月にかけて発生したものの、11月以降は発生しませんでした。太平洋全域でもハリケーンの発生数が少なく、静かなシーズンでした。

また、2010年の台風の経路は全体的に西に偏っており、東経150度より東側を通過した台風はありませんでした。発生場所も高緯度なものが多く、気象庁はフィリピン東海上における太平洋高気圧の強さ、積乱雲の発生しにくさを一因として指摘しています。

2010年は、エルニーニョ現象からラニーニャ現象への移行期であり、1998年も同様に移行期でした。この移行期はフィリピン東海上での高気圧形成に関連があるという分析もあります。

各台風の詳細

台風1号（オーマイス）

3月22日にカロリン諸島で発生。フィリピン名「アガトン」。発達せず短命でした。

台風2号（コンソン）

7月12日にフィリピンの東で発生。フィリピン名「バズヤン」。ルソン島に上陸し、ベトナム北部で熱帯低気圧に。

台風3号（チャンスー）

7月19日に南シナ海で発生。フィリピン名「カロイ」。中国広東省に上陸後、熱帯低気圧に。

台風4号（ディアンムー）

8月8日に宮古島の南で発生。フィリピン名「エスター」。東シナ海から日本海に進み、秋田県に上陸。東北地方に上陸したのは6年ぶりで、秋田県への上陸は観測史上初。近畿地方から北日本にかけて大雨をもたらし、各地で被害が発生しました。特に京都府や大阪府では、1時間に100mmを超える猛烈な雨が降りました。

台風5号（ミンドゥル）

8月23日に南シナ海で発生。ベトナムに上陸し、漁民の行方不明や死者を出しました。

台風6号（ライオンロック）

8月28日に南シナ海北部で発生。フィリピン名「フロリタ」。台風8号と藤原効果を起こし、中国に上陸。

台風7号（コンパス）

8月29日に日本の南で発生。フィリピン名「グレンダ」。沖縄地方に接近後、朝鮮半島に上陸。韓国で大きな被害をもたらしました。

台風8号（ナムセーウン）

8月30日に東シナ海で発生。台風6号に吸収されて消滅しました。

台風9号（マーロウ）

9月3日に沖縄の南で発生。フィリピン名「ヘンリー」。沖縄本島に接近後、日本海を通り福井県に上陸。北陸地方への上陸は観測史上初。静岡県や神奈川県で大きな被害を出し、激甚災害に指定されました。

台風10号（ムーランティ）

9月9日に南シナ海北部で発生。中国福建省に上陸。中国東部で死者が出ました。

台風11号（ファナピ）

9月15日に沖縄の南で発生。フィリピン名「インダイ」。先島諸島に接近後、台湾に上陸。台湾と華南地方で甚大な被害をもたらしました。

台風12号（マラカス）

9月21日にマリアナ諸島付近で発生。小笠原諸島に接近しましたが、日本本土には上陸しませんでした。

台風13号（メーギー）

10月13日にマリアナ諸島沖で発生。フィリピン名「フアン」。非常に強い勢力でフィリピンに上陸し、大きな被害を出しました。

台風14号（チャバ）

10月25日にフィリピンの東で発生。フィリピン名「カトリング」。奄美大島に接近しましたが、大きな被害はありませんでした。その後、温帯低気圧になりました。

影響と被害

2010年の台風は、各地で交通機関の混乱やイベントの中止を引き起こしました。特に台風4号では、近畿地方を中心に記録的な大雨となり、浸水被害が相次ぎました。また、台風9号は、静岡県や神奈川県で甚大な被害をもたらし、激甚災害に指定されました。台風14号の影響では、三宅島で最大瞬間風速44.9m/s、静岡県御前崎市で33.0m/sを観測しました。関東地方でも大雨による被害が発生し、各地で交通機関が乱れました。早慶戦の順延や、バレーボール世界選手権での停電、東京競馬の中止など、多くのイベントが中止や延期となりました。フィリピン、ベトナム、中国、韓国、台湾など、各地で死者・行方不明者が多数出ています。

その他

フィリピン名(PAGASA名)は、熱帯低気圧がフィリピン大気地球物理天文局（PAGASA）の管轄エリアに入った際に命名されます。

外部リンク

- Joint Typhoon Warning Center
- Meaning of typhoon names (JMA)
- Japan Meteorological Agency - Tropical Cyclone Information
- Digital Typhoon - Typhoon Images and Information
- PAGASA - Tropical Cyclone Information for the Phillipines
- Tropical Cyclone Information issued by Hong Kong
- Tropical Cyclone Information issued by Taiwan

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