2011年リノ・エアレース墜落事故

2011年リノ・エアレース墜落事故について

2011年9月16日に発生したリノ・エアレースでの墜落事故は、米国の航空史における大きな悲劇の一つと言える。ノースアメリカン P-51 マスタング機「ザ・ギャロッピング・ゴースト」が観客席に墜落したこの事故により、パイロットを含む11人が命を落とし、69人が負傷した。この事故は、アメリカ国内のエアレースでの航空事故としては、死者数が最も多い事故の一つに位置付けられている。

事故の経緯

「ギャロッピング・ゴースト」を操縦していたのは、経験豊富なパイロット、ジェームズ・K・リワードだった。彼は、レース中のパイロン8を通過し、3番目の位置で飛行していたが、突然機体が急上昇し、空中で反転した後に急降下を始めた。結果として、機体は時速約350ノット（約650km/h）という驚異的な速度で、ボックス席近くの地面に激突した。この悲劇により、現場で7人、さらに4人が搬送先の病院で死亡する結果となり、翌日のリノ・エアレースは急遽中止された。

事故直後、アメリカの国家運輸安全委員会（NTSB）が調査を開始し、墜落直前に機体から尾翼の一部が脱落していた可能性を注視した。事故当時撮影された写真には、機体が反転し、左側の昇降舵からトリム・タブが失われている様子が確認されている。

事故調査の結果

NTSBは事故機の過去の改造履歴を調査したところ、「ギャロッピング・ゴースト」は主翼と水平尾翼が切り詰められるなどの改造が施され、機体が軽量化されていたことが判明した。これにより抗力は減少し、より速い速度での飛行が可能になったが、同時に機体の安定性が失われるという逆効果を招いていた。この日、リワードは460ノット（約850km/h）近い速度で飛行しており、以前の最高速度を35ノット（約65km/h）上回っていた。

2012年8月に公表された調査報告書では、トリム・タブの取り付けに使用されていた使い捨てのナットが緩んでいたことが主な要因とされている。このナットの緩みが原因で、取り付けネジに疲労裂けが生じ、トリム・タブが不安定に動く結果となった。この不安定な動きが、トリム・タブの接続部分を破損させ機体のコントロールを失わせた。また、改造後に必要な飛行テストが行われていなかったことも、事故の一因として挙げられた。トリム・タブの脱落時には、17Gという強大なGフォースが発生し、リワードは瞬時に気絶したと考えられている。

過去のインシデント

リノ・エアレースの歴史には、過去にもいくつかの悲劇的なインシデントが存在する。1970年9月、別のP-51機「ミス・キャンディス」がエンジントラブルを起こし滑走路を逸脱。一方、1998年には「ブードゥー・チャイル」がレース中にトリム・タブが脱落、その際にパイロットは気を失う場面があった。この機体も後に2011年のレースでギャロッピング・ゴーストの近くを飛行していた。

映像化とその影響

この墜落事故は、メディアやドキュメンタリー番組で取り上げられることによって、航空レースの安全性に対する懸念を再燃させた。特に、実際の事故の動画や音声が流れる中で、観客や運営側に与える影響について多くの議論が行われている。

リノ・エアレースは、過去のトラウマを乗り越え参加者たちが集結するイベントであるが、事故の教訓を忘れずに安全対策を強化する必要が求められている。

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