2017年カタール外交危機

2017年カタール外交危機の概要

2017年、カタールは中東地域のいくつかのイスラム諸国から国交断絶措置を受けるに至りました。この一連の出来事は、主にサウジアラビアを中心としたペルシャ湾岸諸国、エジプトなどによるもので、地域の政治的緊張を浮き彫りにしました。

外交経過

断交の発表

2017年6月5日、サウジアラビアやUAE、エジプトなどの国々はカタールとの国交を断絶すると発表しました。国交断絶の理由として、カタールがサウジアラビアと対立するイランに接近し、またエジプトのムスリム同胞団への支援を行っている点が挙げられました。ムスリム同胞団は、エジプトやサウジアラビアにおいてテロ組織に指定されているため、カタールの政策は他国からの強い非難を浴びることとなります。

カタールの外相はこれに対して、「事実無根であり、屈服することはない」と発表し、国際的な対抗姿勢を示しました。

要求の提示

その後、アメリカの国務長官レックス・ティラーソンは、各国がカタールに対してどのような具体的な抗議を行い、要求を提示することを期待する旨を表明しました。そして、6月24日までにサウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトの4カ国は、カタールに対して13項目の要求を送付しました。

これには、著名な衛星テレビ局アルジャジーラの閉鎖や、カタール国内に駐留しているトルコ軍の撤退、イランとの外交関係の縮小、過激派組織との断交などが含まれていました。カタールはこれを拒否し、そしてその後さまざまな対抗措置を講じることとなります。

経済制裁と国際的な対応

カタールは、経済制裁が違法であるとして世界貿易機関（WTO）に提訴を行い、禁輸された物資をオマーン、インド、イラン、トルコから輸入する形に切り替えました。この期間中、カタールの液化天然ガス（LNG）の生産量を7700万トンから1億トンに増やす計画も発表されています。

さらに、カタールはトルコ軍との軍事演習を実施したり、西洋諸国から武器を購入したりと、国際的な防衛協力を強化しました。特に中国との関係も強化しており、2017年12月のカタール建国記念の軍事パレードでは中国製のミサイルを展示するなど、中華人民共和国への接近が見られました。

2018年以降の展開

2018年も情勢は厳しく続き、サウジアラビアによる国境閉鎖、直行便の運航停止などが続きました。この影響で、カタールに住む多くのイスラム教徒がメッカへの巡礼を果たすことができなくなりました。

サウジアラビアが国境線沿いに運河を建設する構想を発表するなど、さらなる緊張もみられましたが、実現可能性は疑問視されています。

国交回復の合意

2021年1月4日には、クウェートの仲介により、カタールとサウジアラビア間で国交回復に向けた合意が実現しました。これに伴い、他の断交国とも国交が回復されました。サウジアラビア及びその他の国々との関係は、段階的に正常化されていくこととなりました。

この危機はカタールの外交戦略や周辺国との関係に大きな影響を與え、特にトルコとの緊密な関係が築かれるきっかけともなったのです。

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