ムスリム同胞団

ムスリム同胞団

ムスリム同胞団（アラビア語: جماعة الإخوان المسلمين‎）は、1928年にエジプトで設立されたスンナ派のイスラム主義組織である。創設者のハサン・アル＝バンナーは、西洋からの独立とイスラム文化の復興を目指し、当初は小規模な慈善団体として活動を開始したが、次第にその影響力を拡大した。

歴史的背景

1920年代のエジプトは、イギリスの保護下にあり、世俗的な民族主義が台頭していたため、イスラム主義者からはこの状況が否定されていた。西洋に対抗するための教育と政治活動を通じて、同胞団は初期の活動を開始し、1930年代にはエジプト国内で急速に成長を遂げた。特に1940年代には、医療、教育、社会奉仕活動を通じて市民に支持を集める。

同胞団は、1952年のエジプト革命に参加し、王政を崩壊に導く役割を果たしたが、その後、自由将校団との権力闘争が勃発し、ナーセル政権によって厳しい弾圧を受けることになる。1954年には暗殺未遂事件を受け、団員が投獄され、多くの指導者が処刑された。これにより同胞団は一時的に勢力を失うが、70年代に入るとサーダート政権のもとで再び活動を展開し、当時の政治的情勢に応じた柔軟な立場を取るようになる。

現代の展開

2011年のエジプト革命では、同胞団は再度政権に進出し、自由公正党を結成。この党は、民主的な選挙を通じて権力を掌握した。ムハンマド・ムルシーが大統領に就任し、さまざまな社会経済的政策を試みたが、困難な経済情勢や権力への不満が高まり、その結果、2013年にクーデターが発生し、ムルシー政権は崩壊した。その後、同胞団は「テロ組織」として扱われ、指導者たちは逮捕・投獄され、組織としての活動も抑圧された。

イスラム社会への影響

ムスリム同胞団は、イスラム主義の中でも特に影響力を持つ組織とされている。また、ハマースの母体とも関連しているため、中東におけるイスラム抵抗運動にも重要な位置を占めている。同胞団内部では、穏健派と過激派の間での対立が続いており、非暴力的な路線を維持しようとする者もいれば、状況によっては武装闘争を選択する者もいる。

外部との関係

国際的には、同胞団に対する評価は分かれている。欧米諸国は過激派との関係を懸念し、特にロシアなどは同胞団をテロ組織に指定している。一方で、トルコやカタールは同胞団の活動を支持する立場を取っている。中東地域においては、サウジアラビアやアラブ首長国連邦をはじめとする国々が同胞団を敵視し、テロ組織として非合法化を進めている。

社会的役割

同胞団は、医療や教育、社会福祉活動を通じて貧困層への支援を行ってきたため、草の根運動としての支持基盤を築いている。しかし、組織内部の権力闘争や外部からの圧力によって、その影響力は今後どのように変化していくのか不透明な状況にある。

結論

ムスリム同胞団は、エジプトだけでなく中東全体において重要な政治的、社会的な存在であり、その使命はイスラム法に基づく国家の構築にあります。彼らの動向は、地域の政治情勢に強く影響を及ぼし続けるでしょう。

もう一度検索