2017年仙台市長選挙

2017年 仙台市長選挙

2017年 7月23日に投開票が実施されたこの選挙は、日本の主要都市である仙台市の市政を担う新たなリーダーを選出するために行われました。

概要

当時の奥山恵美子市長の2期にわたる任期満了に伴い実施されました。奥山氏は3期目への出馬を見送り引退を表明したため、選挙戦は新人4名によって争われる異例の展開となりました。前回選挙では、現職への信任を問う構図の中で投票率が過去最低を記録しましたが、今回は元職を含む3名の国政経験者が立候補するなど、多様な顔ぶれが揃い、前回から投票率は大きく上昇し注目を集めました。

主な争点

今回の選挙では、多岐にわたる市政の課題が論点となりました。主な争点は以下の通りです。

2期にわたる奥山市政の実績と今後の評価
東日本大震災からの「ポスト復興」を見据えた経済活性化策
進行する市内の人口減少への対策
学校におけるいじめ問題への対応策
地域経済を支える中小企業への支援強化
エネルギー政策としての東北電力女川原子力発電所の再稼働の是非
共働き世代などが直面する待機児童問題の解消

これらの課題に対し、各候補者は独自の政策やビジョンを掲げ、市民への支持を訴えました。

各候補者の動きと擁立の背景

選挙戦に向けた各陣営の動きは、奥山現市長の引退表明から本格化しました。

2017年4月上旬、奥山氏が3選不出馬の意向を周囲に伝えたと報じられると、水面下での候補者擁立に向けた動きが活発化しました。

5月に入ると、元自民党衆議院議員の大久保三代氏が最初に無所属での立候補を正式表明しました。続いて、地元の葬儀会社社長である菅原裕典氏が一部若手経営者の要請を受け出馬意向を表明し、同月下旬には正式に立候補を表明。宮城県知事の村井嘉浩氏も即座に菅原氏への支援を表明しました。

一方、民進党は、地元東北放送の元アナウンサーで当時衆議院議員だった郡和子氏の擁立を中心に調整を進めました。しかし、同党県連副代表を務めていた元衆議院議員の林宙紀氏が、民進党からの立候補を模索しつつも、5月下旬に離党届を提出し無所属での出馬意向を示唆。林氏は6月上旬に市役所で記者会見を開き、正式に立候補を表明しました。

民進党宮城県連は6月上旬、改めて郡氏を候補者として内定。市民団体の集会後、郡氏自身も立候補に前向きな姿勢を示しました。これに対し、仙台市議会の民進党会派に所属する議員3名（安孫子雅浩副議長ら）は党の方針に反して菅原氏を支援し、選挙後に離党するなど党内に波紋を広げました。

さらに注目されたのは、奥山現市長の動向です。奥山氏は当初、自身の市政継承を掲げる郡氏ではなく、市の財政状況などを考慮し、対立候補である菅原氏への支持を表明しました。これは、共産党が奥山市政の継承を掲げる郡氏への支持を決定する一方で、奥山氏自身に対しては復興での実績を軽視し批判的な姿勢をとってきたことへの反発があったためとされています。

業界・各団体の動き

異例の対応を見せたのが仙台市医師会の政治団体、市医師連盟です。7月上旬、菅原氏、郡氏、林氏の3候補から推薦要請があったのに対し、特定の候補に絞らず、いずれの候補にも推薦状を出すという方針を決定しました。

出馬を取りやめた動き

選挙戦への意欲を示しながらも、最終的に立候補を見送った人物もいました。

梅原克彦氏（元仙台市長、国際教養大学教授）：当初出馬に意欲を見せましたが、自民党が菅原氏擁立を正式に決定したことなどを受け、「保守勢力の分裂を避けるため」として6月上旬に出馬を断念しました。
* 伊藤優太氏（仙台市議会議員）：市内の福祉・医療分野の若手経営者からの出馬要請がありましたが、「現在の市議としての職責に向き合いたい」として、最終的に立候補を見送りました。

選挙結果

投開票の結果、この選挙は、自民党・公明党など与党勢力が支持する菅原氏と、民進党・共産党・社民党・自由党といった野党4党が支援する郡氏による、事実上の与野党対決の構図が中心となりました。結果は、野党勢力が支援した元衆議院議員の郡和子氏が、与党勢力が推す菅原氏らを抑えて当選を果たしました。この結果は、2016年の参議院選挙宮城県選挙区と同様に、国政での与野党対立の構図が地方選挙にも反映され、野党系候補が勝利する流れとなったと分析されました。

落選した菅原氏は、自民・公明両党の支持を得ましたが、当時の国政における自民党への相次ぐ疑惑や不祥事が有権者の批判票につながり、足を引っ張る形となったことが敗因の一つとして挙げられました。当選した郡氏と次点の菅原氏との票差は約2万票、惜敗率は約90%と、激しい接戦であったことがうかがえます。

選挙当日の有権者数は873,635人、最終投票率は44.52%でした。これは前回選挙から14.41ポイント増加しており、新人候補による激しい選挙戦や多様な争点への関心の高まりが投票率の上昇につながったと考えられます。

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