2020 HS7

小惑星 2020 HS7

2020 HS7は、太陽系を公転する数多の天体の中でも、地球軌道の近くを通過する軌道を持つ「地球近傍天体（NEO: Near Earth Object）」に分類される小惑星の一つです。この小惑星は、2020年4月に地球に比較的接近したことで注目されました。

2020年の地球接近

2020年4月28日、2020 HS7は地球へ最接近しました。その際の地球の中心からの距離は、およそ4万2700キロメートルでした。これは、地球の半径（約6400キロメートル）の約6.7倍、静止衛星が軌道を描く高度（約3万6000キロメートル）よりわずかに遠い程度の距離にあたります。この接近時、2020 HS7は地球に対して秒速およそ15.6キロメートルという高速で相対的に移動していました。

天体発見当初は、軌道の不確実性から地球に衝突する可能性が10パーセント程度あると評価されました。しかし、その後の観測でより精確な軌道が計算された結果、地球に危険を及ぼすような接近ではないことが明らかになり、懸念は払拭されました。

発見とサイズ

2020 HS7は、地球への最接近の前日である2020年4月27日に発見されました。発見は、ハワイのマウイ島にあるハレアカラ天文台で行われているパンスターズ計画（Pan-STARRS）によってなされました。この計画は、地球に接近する可能性のある天体を自動的に捜索することを目的としています。

この小惑星のサイズは、推定で乗用車とほぼ同じ程度と見られています。比較的小さな天体です。

将来の軌道

軌道計算によれば、2020 HS7が再び地球に接近することはありますが、少なくとも2055年までの予測においては、月までの平均距離（約38万4400キロメートル）よりも内側に入り込むような接近は起こらないと考えられています。

特異な自転

2020 HS7に関する特に興味深い観測結果は、その自転についてです。2022年、日本の長野県にある東京大学木曽観測所で行われた観測により、この小惑星がわずか3秒という極めて短い周期で自転していることが判明したと報告されました。

通常、小惑星の自転周期は数時間から数十時間であることが多く、数秒といった周期で自転している天体は非常に珍しいとされています。このような高速自転は、天体の形状や内部構造、あるいは過去の衝突イベントなどに関する重要な情報を提供しうるものです。

木曽観測所での観測で得られた、自転に伴う明るさの変化（光度曲線）には、わずか0.07等級という非常に小さな振幅しか見られませんでした。一般的に、細長い形をした天体ほど自転による明るさの変化は大きくなる傾向があります。2020 HS7で観測された光度変化が小さかった理由としては、この小惑星の形状がほぼ球状に近いこと、あるいは観測が行われた時点で、自転軸が地球の方向とほぼ平行になっていたために、見かけ上の形状変化が小さく見えたことなどが考えられています。

2020 HS7は、その接近軌道と特に短周期の自転という特徴から、地球近傍天体および高速自転小惑星の研究対象として、今後も観測が続けられる可能性がある興味深い天体です。

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