2020 XR

2020 XR

2020 XRは、地球に比較的近い軌道を巡る小惑星であり、アポロ群に分類されます。その推定直径は約390メートルであり、地球への潜在的な脅威となりうる「潜在的に危険な小惑星」（PHA: Potentially Hazardous Asteroid）の一つに数えられています。

発見と初期の懸念

この天体は、2020年12月4日にハワイにあるパンスターズ2望遠鏡の観測によって発見されました。発見時の2020 XRは、地球から約6370万キロメートル（0.426天文単位）離れた位置にあり、太陽とは約75度の角度をなしていました。発見から間もない2020年12月8日には、軌道上で太陽に最も接近する近日点を通過しています。

発見直後のわずか5日間の観測データに基づいた初期の軌道計算では、2028年12月1日に地球に衝突する可能性が1万1千分の1という低い確率ながら存在すると算出されました。この計算結果に基づき、地球衝突リスクを示すパレルモスケールは-0.70となり、NASAのジェット推進研究所（JPL）が管理するSentry Risk Tableにおいて、当時リストされていた天体の中で最も注意すべきものの一つとして上位に挙げられました。この時点では、更なる観測による軌道精度の向上が待たれる状況でした。

軌道の確定とリスクの解消

しかし、その後の追加観測、特に過去の観測データとの照合によって、2020 XRの軌道に関する情報は飛躍的に改善されました。2020年12月13日には、2013年、2016年、そして2020年半ばに行われていた過去の観測データが特定され、これらを組み合わせることで、2020 XRの観測期間を一気に約7.8年分へと延長することが可能となりました。これにより、その軌道が極めて高い精度で決定されました。

軌道の精度が大幅に向上した結果、2028年12月1日における地球と2020 XRの正確な位置関係が再計算されました。その結果、衝突の可能性は完全に否定され、2020 XRはSentry Risk Tableから削除されることとなりました。この事例は、地球に接近する天体のリスク評価において、長期にわたる精密な追跡観測データが極めて重要であることを示しています。

今後の接近

2020 XRは今後も地球軌道に接近するタイミングがあります。

特に注目されるのは、2024年12月4日の接近です。この日、2020 XRは地球から約220万キロメートル（0.0147天文単位）という比較的近い距離を通過すると予測されています。この時点での距離の予測には、約±800キロメートルという小さな誤差が見込まれています。この接近時に地球の重力による影響（摂動）を受けることで、2020 XRの軌道は変化すると考えられており、特に公転周期は約10日ほど長くなると予測されています。

また、2028年にも地球への接近が予報されています。2028年11月7日には地球から約1810万キロメートル（0.121天文単位）の距離を通過し、12月1日には約2800万キロメートル（0.19天文単位）まで離れる見込みです。この12月1日時点での距離予測には、約±1万キロメートルの不確実性があるとされています。

まとめ

発見当初は一時的に地球への衝突リスクが指摘され、注目を集めた2020 XRですが、その後の精密な観測と解析により、差し迫った危険はないことが確認されています。直径約390メートルというサイズは、もし地球に衝突すれば広範囲に被害をもたらす可能性があるため、「潜在的に危険な小惑星」という分類は変わりませんが、現時点のデータに基づく限り、近い将来に地球へ衝突する恐れはありません。地球近傍天体の正確な軌道を把握するためには、継続的な観測が不可欠であり、2020 XRも引き続き観測の対象となっています。

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