2021年の航空

2021年の航空概観

2021年（令和3年）は、前年からの新型コロナウイルス感染症の世界的流行が航空業界に引き続き大きな影響を与え続けた一年でした。国際線の需要低迷は続き、多くの航空会社が厳しい経営環境に置かれました。このような状況下で、複数の重大な航空事故が発生し、多くの命が失われる悲劇も起こっています。一方で、運航が停止されていた主要機種の再開、航空機メーカーの生産終了、新たな航空会社の設立や主要空港の開港など、将来に向けた動きも見られました。

相次ぐ事故と安全への教訓

年明け早々、インドネシアでは1月9日にスリウィジャヤ航空182便が離陸後に墜落し、搭乗していた62名全員が死亡する事故が発生しました。ブラジルでも1月25日に小型機が墜落し、サッカーチーム関係者が犠牲となっています。夏にはアジアとロシアで軍用機を含む複数の墜落事故が相次ぎ、フィリピンでは7月4日に空軍のC-130輸送機が墜落し、53名が死亡、50名が負傷しました。ロシア連邦内では、7月6日にカムチャツカ地方でペトロパブロフスク・カムチャツキー航空251便が墜落し28名全員が死亡、10月10日にはタタルスタン共和国で小型機が墜落し16名が死亡するなど、痛ましい事故が立て続けに起こりました。これらの事故は、航空安全の確保が常に最優先課題であることを改めて浮き彫りにしました。

業界再編と経営の動向

パンデミックによる需要激減は、航空会社の経営に深刻な打撃を与え続けました。韓国のイースター航空は1月14日に会社更生手続きを申請し、経営再建の道を模索することとなりました。また、中国の巨大企業グループである海航集団（HNAグループ）が1月29日に経営破綻を発表。グループ傘下の航空会社を含む再編が進められました。アフリカ南西部のナミビア航空も、経営破綻により2月11日に運航を停止しています。これらの事例は、世界中の航空会社が直面したかつてない経営の厳しさを示すものです。

航空機材の動き

機材面では、注目すべき進展がありました。世界中で運航が停止されていたボーイング737MAXについて、欧州航空安全局（EASA）が1月27日に運航停止措置を解除し、欧州での運航再開を認めました。これは、同型機の運航会社にとって大きな前進でした。長年にわたり地域路線で活躍してきたボンバルディアCRJシリーズは、2月25日をもって最後の機体が納品され、製造が終了しました。一方、新型ビジネスジェットであるダッソー ファルコン 6Xが3月10日に初飛行を行うなど、新たな航空機の開発は続いています。

新規参入とインフラ整備

厳しい市場環境の中でも、新たな航空会社の誕生やインフラ整備の動きも見られました。アメリカ合衆国では、アヴェロ・エアラインズが4月27日に、ブリーズ・エアウェイズが5月27日にそれぞれ商業飛行を開始し、新たなビジネスモデルでの市場開拓を目指しました。アイスランドでは、新規格安航空会社プレイが6月24日に開業しています。中国では、既存の成都双流国際空港の混雑緩和のため建設が進められていた成都天府国際空港が6月29日に正式に開港し、中国西部における航空輸送能力が大きく向上しました。

その他の出来事

その他の出来事としては、1月29日に日本航空の仙台発新千歳行き2903便が、新千歳空港への着陸後に視界不良で滑走路を逸脱しました。7月2日にはハワイ沖でトランスエア810便が不時着水するも、乗員2名が無事救助されました。10月19日にはアメリカのヒューストン・エグゼクティブ空港でMD-87型機が離陸に失敗し炎上する事故も発生しています。また、ロシアのサハリン州では、アヴィアシェリフ（タイガ）が12月22日にユジノサハリンスク空港とポロナイスク、スミルヌイフを結ぶローカル新規路線を開設しました。

2021年は、パンデミックの長期化による影響に加え、悲劇的な事故や経営難という厳しい現実と向き合いながらも、運航再開、新型機、新規参入、インフラ整備といった前向きな動きも見られた、航空業界にとって重要な転換期の一年であったと言えるでしょう。

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